- 江角マキコ演じるゆみ子の“喪失と再生”を描いた物語。
- 喪失感をゆっくりと癒すかのような演出が、様々な方向からアプローチされているようなドラマ作品
- ゆみ子の衣装の色の変化にも注目!
- 「演技をしない」にこだわり抜いたカメラワークにも注目!
オススメ度 | (3/5) |
公開日 | 1995年 |
制作国 | 日本 |
上映時間 | 109分 |
ジャンル | ドラマ |
『幻の光』は1995年に公開された、『怪物』などの是枝裕和監督の劇場映画デビュー作であり、江角マキコの映画初出演作品でもあります。
そんな本作は江角マキコ演じるゆみ子の“喪失と再生”を描いた物語。
ゆみ子は12歳の頃に祖母が失踪してしまい、それを止められなかったのは自分のせいだとトラウマを抱えています。さらに大人なり子供にも恵まれ幸せに暮らしていたと思いきや、ある日突然夫が自殺。そんな喪失感をゆっくりと癒すかのような演出が、様々な方向からアプローチされているようなドラマ作品でした。
後半になって移り住む、奥能登(能登半島)の寂しげな景色がノスタルジックな思いを掘り起こします。
物語の進み方や演出は控えめで、単調なので「みんなが楽しい映画」と言うわけではなく、同じような悩みを抱えている人にとって救いとなるような映画かなと思います。つまりはソフトストーリー的な映画ということですね。
どんな悩みなのか僕なりの解釈をしてみると「残された人の葛藤」と言ったところで、去る人は突然去ってしまうけど、残された人は葛藤を抱えながらも生活は続いていくということを言っているのだと思います。
愛するものを失った喪失感は、そう簡単に浄化できるものではなく、長い時間をかけてゆっくりと再生へと向かっていきます。本作はそんな悩みを抱える人々に対して対してエールを贈っている様に思えました。
どんなアプローチがされているかというと、例えば前半の喪失(祖母の失踪、夫の自殺)が後半でも同じ様なことが起きそうな匂わせをしますが、後半ではゆみ子のもとに帰ってきます。
さらにゆみ子の着ている衣装ですが、前半は常に黒だったのに対し、物語の終盤でどんな色に変化しているかぜひ注目してみてもらいたいです。
また本作のカメラワークも特筆しておきたいところで、画角がどんな効果を生むのか”型”の様なものを知っているからこそ、貫ける作風があって、それを最大限に活かしたカメラワークだったと思います。
どんなカメラワークだったかというと、カメラが徹底的に動かないんですね。
黒澤明は「カメラが演技をするな!」とフォーカスの入れ替えを特に嫌ったと言いますが、その究極ですね。『幻の光』は究極的にカメラが演技をしない映画です。
そうすることで独特の静けさと、ぼーっと覗いているかのような没入感があって、無駄に動かない方が帰ってその場にいるような感覚を与え、ともすると集中力を生み出してくれているのかもしれません。
だからこそ何の変哲もない等身大の風景ショットも多いのだと思います。
また前半と後半で間取りや画角を合わせることにも一役買っています。
そんな『幻の光』、気になる方は是非ご鑑賞ください。
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『幻の光』はDVDとブルーレイ、そして4KUHDのフォーマットで販売されています。
ただ、物理ディスクの強みである特典映像は少なく、音声解説の収録もないので、円盤をコレクションでもしていない限り、配信でもいいかなと思います。