- 死者が生前で最も大切な思い出を振り返る物語
- 「人に歴史あり」ということを体現した作品
- 「映画作りを映画化」というのも隠れたテーマにも注目!

オススメ度 | (3/5) |
公開日 | 1999年 |
制作国 | 日本 |
上映時間 | 118分 |
ジャンル | ドラマ ファンタジー |
『ワンダフルライフ』は1999年に公開された是枝裕和監督による作品。
主演は『福田村事件』の井浦新(旧芸名:ARATA)、内藤剛志や寺島進、小田エリカや谷啓、そして若かりし頃の伊勢谷友介などが助演として脇を固めています。
そんな本作は、あの世とこの世の狭間の世界とでもいうべきか、亡くなってから1週間だけ滞在する場所を舞台に、生前で最も大切な思い出を振り返させる物語。
1週間の滞在期間のうち、3日で最も大切な思い出を選び、残りの4日で思い出を再現し、その記憶が鮮明に蘇ると、その思い出だけを抱いてあちらの世界(おそらく天国のこと)で永遠の時間を過ごすことになるのだそう。
上記のようにファンタジーな設定でありながら、ソフトストーリー的というべきか、一人ひとりの人生を丁寧に暖かく振り返っていく流れがとても心地の良い物語でした。
最も大切な思い出を一つだけ。という設定が実に物語をドラマチックにしており、その1つを導き出すために死者達は葛藤します。そんな葛藤のおかげあって、人ひとりの人生を違和感なく掘り起こしてくれるのです。
とてもドキュメンタリー味を感じたので調べてみたら、演者には簡単な設定だけ伝えただけで、そのほとんどはアドリブなんだそうです。

そもそも是枝監督はドキュメンタリー畑出身みたいですね。
つまり役の中で語っているそれぞれのエピソードは、おそらくですが真実も混ざっているのかななんて思います。そう思うとどの人のエピソードもとても興味深く、「人に歴史あり」ということを体現した作品だったように思えます。
そんな真実味に説得力を持たせるかのように、設定こそファンタジーですが、それ以外は実に現実的で、なんだかおおらかな田舎の市役所にでも訪れたかのような雰囲気がまたいい味を出しています。
クロエ・ジャオの『ノマドランド』や『ザ・ライダー』でも同じようなアプローチで製作されているので、本作に魅力を感じた方はこちらもぜひご覧ください。
また「人に歴史あり」ということを体現した作品に関連して『東京の生活史』という書籍もおすすめです。
そんなファンタジーと真実味が交わった不思議な感覚を与える本作ですが、前作『幻の光』のアンサー的な作品でもあるのかなぁなんて思ったりもします。
というのも『幻の光』は残された人の葛藤を描いており、本作『ワンダフルライフ』は死後の世界を描いているからで、図らずともアンサー的な関係になってしまっているのかもしれません。
また明らかに「映画作りを映画化」というのも隠れたテーマとして存在しているでしょう。死者達の最も大切な思い出が決まったあとは、狭間の世界のスタッフがある物の中でアイディアを出し合って、死者が自分の思い出をできる限り鮮明にイメージしやすいように努力の限りを尽くします。
これって死者を観客に見立てれば、思い出を監督のイメージに見立てると、まさに映画作りそのものですよね。
そんな『ワンダフルライフ』、気になる方は是非ご鑑賞ください。
配信状況は上記の通り。現在『ワンダフルライフ』はU-NEXTとAmazonプライムビデオで配信しています。
U-NEXTは見放題で配信している上、初めての入会なら600円分のポイントがもらえます。
もらったポイントは別の最新作のレンタルや、映画館のチケットに利用することもできます。

というわけで『ワンダフルライフ』を観るなら、今のところU-NEXTがオススメです!
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『ワンダフルライフ』はDVDとブルーレイ、そして4KUHDのフォーマットで販売されています。
ただ、物理ディスクの強みである特典映像は少なく、音声解説の収録もないので、円盤をコレクションでもしていない限り、配信でもいいかなと思います。