はじめまして!オレンチと申します。
今回は2023年に公開されたチャド・スタエルスキ監督の最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』についてお話ししていこうと思います。
ちなみ本ブログでは『ジョン・ウィック』シリーズの魅力を深掘りしてご紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。
『ジョン・ウィック』シリーズの魅力を深掘り分析!さらに面白くなること間違いなし!観るべき順番も解説というわけで早速ですが本題へと進んでいきましょう!
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』のネタバレ感想・解説・考察
ジョナサン・ウィックの夜明け
妻との大切な思い出が込められた愛犬を殺されたことをきっかけにロシアンマフィアを壊滅させた1作目の『ジョン・ウィック』。血の誓印によって裏社会へと引きずり戻された2作目の『ジョン・ウィック:チャプター2』。さらに裏社会のルールを破ったことによる粛清からの逃亡と禊ぎの旅となる3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』。
このようにジョン・ウィックがこれまでたどった道を思い返してみると、闇へ──さらにその深淵へと堕ちていく物語でした。そんなジョン・ウィックの状況を表すかのように、常にジョン・ウィックの物語は夜を舞台に語られていたんです。
しかし本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、映画史的に見ても非常に有名な『アラビアのロレンス』のシーンをオマージュした、日の出からジョン・ウィックが飛び出してくるシーンから幕を開けます。
その後も日の光を意識したショットが続きますが、極め付けは前3作とは明らかに異なるネオンカラーの使われ方です。
『ジョン・ウィック』シリーズといえば、夜の世界を雄弁に語るように青や紫、ピンクや赤といったネオンカラーで照らされていることが特徴的でした。
しかし本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、オレンジとグリーンのグラデーションが意図的に選択されていたんです。あまりにも意図的に多様されていたため、「何かのメタファーになっているはず」とは感じていましたが、クライマックスでその疑問は確信に変わりました。
と言うのも決闘の舞台になっているサクレ・クール寺院で、朝日が登った時。これまで多用されていたネオンカラーのグラデーションと全く同じグラデーションが生まれたんです。
つまり本作のネオンカラーであるオレンジは朝日を、グリーンは朝日の光が闇に溶け込んだ時に発生する色を表現していたんです。
つまり本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、ジョナサン・ウィックの夜明けの物語だったと言うわけです。
もちろん夜明けも暗喩(メタファー)になっていて、何に見立てているのかと言えば、夜明けとはジョン・ウィックが表の社会へと戻ってきたことを意味しているんですね。
前述した通り、前3作では闇へ闇へと堕ちていく物語なので夜を舞台にしていて、夜というのは裏社会を表現していたのです。
『ジョン・ウィック』シリーズは、影の使い方や映り込みを利用したりすることで、表と裏を語ってきているのでとても『ジョン・ウィック』らしさあふれる表現だったかと思います。
このように裏社会から表社会に戻ってきたジョン・ウィックですが、成し遂げたロケーションにも目を向けておきたいです。
そのロケーションというのがサクレ・クーレ寺院という場所で、サクレ・クーレ寺院はキリスト教において聖なる心臓──、「聖心」を象徴しています。
「聖心」とはイエス・キリストの人類に対する愛の象徴を示しています。そんな場所で表社会へと戻ってきたジョン・ウィックは、ババヤガとしてではなく、<妻を愛した夫>として人生の幕を閉じたのでした。
自由への革命戦士
さて。そんなジョン・ウィックに夜明けをもたらした『ジョン・ウィック:コンセクエンス』ですが、とあるテーマをロケーションや美術を使って雄弁に語られているんです。
そのテーマというのが【自由のための戦い】です。
アクションの凄みにばかり目がいくチャド・スタエルスキ作品ですが、彼は美術にも相当造詣が深く、意図的な理由を添えて物語の中に忍び込ませいるんです。
例えばジョン・ウィックの二面性を表すため、影のかかり方にミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョの絵画を参考にしていたり、『ジョン・ウィック:チャプター2』でジョンとサンティーノの言わば内戦とも言える戦いが始まる直前の背景に、イタリア内戦のことを描いた絵画が飾られていたりしています。
チャド・スタエルスキ作品といっても、実質『ジョン・ウィック』シリーズしかないですけどw
話を本作に戻すと、【自由のための戦い】を描くために本作では「フランス革命」がモチーフにされています。フランス革命は、自由を目的に絶対王政へと立ち向かった暴力革命のことで、血が多く流れた流血革命です。
そのためクライマックスの舞台がパリになっているんですね。
本作で裏社会の頂点に君臨したといっても過言ではないグラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)が、ケイン(ドニー・イェン)に暗殺を司令する場所に注目したいです。
ここはガルニエ宮と呼ばれるパリのオペラ座なのですが、撮影の舞台にもなっているガルニエ宮の大休憩室が、フランス革命にもゆかりがある場所に酷似しているんです。
その場所というのがヴェルサイユ宮殿の鏡の間です。ヴェルサイユ宮殿はルイ14世が建造した宮殿で、絶対王政の象徴的建造物とも言われています。
ともすると外のロケーションから察するに、本作では鏡の間として見立てられていたのかも知れません。
そんなロケーションで権力を振りかざすグラモン侯爵の姿は、絶対王政に君臨する王に見えてきます。またフランス革命とは異なりますが、グラモン侯爵が初登場し、我らがシャロン(ランス・レディック)が処刑されてしまう部屋へと向かう廊下?ような場所には、古代ギリシア建築のドーリア式によく見られるエンタシスが強い柱が多数立っています。
エンタシスとは柱の中部が最も太いことが特徴的で、下から見上げた場合、より柱が太く安定して見えるような錯覚を生む効果を持った柱のことを言います。
ギリシャのパルテノン神殿などが有名ですね。
要するに実際よりも強そうに見せる効果があるということですが、これは侯爵をより大物に見せようとするような効果を期待して配置されているように思えます。
極め付けがルーブル美術館の中で、グラモン侯爵へウィンストン(イアン・マクシェーン)が決闘の申し込みをする場面。この背景に飾られているのはウィジェーヌ・ドラクロワの『民衆を導く 自由の女神』です。
絵画の中心には自由・平等・博愛を示す三色旗と、マスケット銃を持った女性が民衆を導いています。この女性は自由の象徴で実際には存在しませんが、武器を持って自由を勝ち取ろうとする姿がまさに本作を体現していますよね。
つまり随所に散りばめられたフランス革命のメタファーから『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は自由を勝ち取るための戦いだということを象徴していたように感じました。
さらにシャロンが処刑される前にウィンストンと会話をするネッド・ケリーは、オーストラリアにおける伝説の反逆者(アウトロー)でオーストラリアにおいては英雄中の英雄。彼もまた自由のために戦った人だったのです。
ちなみにネッド・ケリーの伝記映画はヒース・レジャー主演の『ケリー・ザ・ギャング』やジョージ・マッケイ主演の『トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング』などがあるので、こちらもぜひ鑑賞してみてください。
アクションの魅せ方
さて。『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を美術的な目線で語ってきたので、ここからはアクションに視線を移してみましょう。
前作『ジョン・ウィック:パラベラム』では『ジョン・ウィック』シリーズの醍醐味である【◯◯・フー】をコレでもかと言うくらい拡大させ、馬や本を自分の手足のように扱う【馬(マー)・フー】や【本・フー】などまで登場しました。
しかし本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』では【◯◯・フー】の拡大とは一旦縁を切り、真新しい【◯◯・フー】は登場しません。ただし様々なタイプのアクションがつるべ打ちされ、それぞれのアクションに適して構図や配置、カメラワークが選択されていたように思えます。
回を重ねるごとにチャド・スタエルスキは監督としての実力を高めていますね!
例えばガンアクション。
ガンアクションのシーンでは3次元的な構図と配置がとられているのですが、これはガンアクションが中距離・遠距離で真価を発揮するタイプのアクションだからかなと。
本作では特に俳優の体の動きに注視すると言うよりは、「3次元の中に配置された標的をいかに華麗に捌いていくのか」という点に美学があり、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』はそんな美学を追求しているように思えます。
もちろん俳優の体の動き──ここで言う場合キアヌ・リーヴスの銃捌きということになりますが、3ガンマッチのトレーニングをするなど徹底的に磨き上げられていて、細かく目を凝らすと過去作で披露した銃捌きは全く錆びついていません。
また『ジョン・ウィック』シリーズが偉いのは、激しいアクションを撮影するためにやりがちな、手ブレ感満載なカメラワークに頼っていないんです。
手ぶれ感満載なカメラワークを利用すると、派手なアクションシーンに錯覚しますが、被写体が何をやっているのかわからない。という映画作品には致命的なデメリットがあります。
『ジョン・ウィック』シリーズのカメラは、実は静かに──そして冷静にアクションを焦点の真ん中に捉えていて、必要最低限な動きしかしていないので、しっかりとアクションの全体像を目に焼き付けることができるのです。
それを可能にしているのはしっかりと空間を把握し、人物の配置や殺陣を徹底的に計画することだと思います。『ジョン・ウィック』シリーズでは、まずスタントマンがプレビズと呼ばれるテスト映像を撮影し、プレビズを模写することでアクションの全体像が把握できる映像が出来上がっているというわけです。
続いては格闘アクションやチャンバラアクション。
上記のようなアクションの場合、俳優の手足の動きと立ち位置がとても重要なので、二次元的というべきか、面で被写体を捉えるような構図とカメラワークがされています。
さらに三次元的な配置のガンアクションよりも御法度なのは決してイマジナリーラインをまたがないことですね。
格闘アクションやチャンバラアクションで、イマジナリーラインをまたいでしまうと、両者の立ち位置が完全に真逆になってしまうので、ただ混乱を生むだけの映像になってしまいます。
とりわけ格闘アクションやチャンバラアクションは格闘技のテレビ中継的な映像に近いかなと思います。ハイライトは別として格闘技のテレビ中継も、基本的には一方の方向から二人を面の映像で映していますよね。
そうすることで両手両足の右左も瞬時に把握でき、格闘技の凄みが潜在的に理解しやすいようになっているのだと思います。
本作では例えばジョン・ウィックがヌンチャクを使うシーンだったり、ケインとシマヅが決闘をするシーンが上記のようなショットに該当します。
特にジョン・ウィックがヌンチャクを使うシーンでは、直前までガンアクションを行なっているので、タイプに合わせてカメラワークや構図を選択していることがよくわかります。
ドラゴンブレスをカッコよく見せる方法
さてアクションシーンと構図についてもう少し深掘りしてみます。
本作で最も印象に残ったシーンのアンケートを取ったら、おそらくドラゴンブレス弾のシーンが上位を占めるんじゃないかなと思います。それくらいドラゴンブレス弾のシーンは印象に残るシーンでした。
どんなシーンかというと、建物の屋根をとっぱらい、真上からジョン・ウィックや刺客たちを映したショットで、ファミコン時代くらいのゲーム(パックマンやボンバーマンなど)の主人公を、自分で操作しているかのようなショットでした。
なぜこんな構図が取られているのかといえば、ブレスを最もよく見せるにはどのような構図を取ったら良いのか熟考した結果だったのだと思います。
というのもブレスが最もカッコよく見えるのは、線として映された時です。ブレスのシーンに奥行きのある構図が採用されていた場合、ブレスに短縮法が働いてしまいダイナミックに見せることができません。
しかしドラゴンブレス弾のシーンはあくまでもガンアクションなので、3次元的に人物を配置したいです。
3次元的に人物が配置できて、ブレスが最もダイナミックに見える構図をとるにはどうしたら良いかと考えた結果が、今回のような映像を生み出したのだと個人的には感じています。
このシーンはエスタブリッシングショット的でもあって、エスタブリッシングショットとアクションシーンが融合した面白いシーンでもありました。
ちなみにエスタブリッシングショットとアクションシーンの融合はガイ・リッチーの『コードネーム U.N.C.L.E.』でも行われているので、そちらもぜひチェックしてみてください。
スタントの美学
さらに言及しておきたいのは凱旋門での【カー・フー】アクションと、クライマックスのサクレ・クーレ寺院へ向かうための222段の階段落ちでしょう。
本作のカースタント撮影のため9ヶ月にも及ぶ訓練をしたキアヌ・リーヴスを、監督でスタントコーディネーターのチャド・スタエルスキは、「キアヌほど運転の上手い俳優は他にいない」と語っています。
そんな最高の技術を身につけた凱旋門での【カー・フー】の見応えは十二分にあり、シリーズの中でも屈指の印象に残るシーンになったかと思います。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』でも凱旋門の周りでスタントをしていたので、2023年はノースタント俳優を惹きつける引力が凱旋門から出ていたのでしょうか。
実はジョン・ウィックはシリーズの中で何回も車に引かれ続けていて、ほとんどの場合、左側から車に轢かれているんです。ちゃんと数えたわけではないですが、本作でも左側から引かれたシーンの方が圧倒的に多かったはず。なぜそうなっているのかはわからないのですが、絵的な見栄えが良いのか、キアヌがスタントをしやすい方向なのか、何か理由はあるのだと思います。
決闘にたどり着く前にボロボロで、もはや決闘どころではない感じでしたけどねw
また階段落ちといえば、やられる系スタントの代名詞の一つ。
個人的にスタントは大きく2種類に分けられると思っているのですが、1つは『ミッション:インポッシブル』シリーズにおけるトム・クルーズがスタントによって観客を沸かす、エクスストリームスポーツのようなスタント。
もう1つはビルからの落下や階段落ちなど、派手なやられ方をするスタントで、『ジョン・ウィック』シリーズには後者のスタント魂を強く感じます。
だからこそ前述した、車に吹き飛ばされるようなシーンが多いんですね。
『ミッション:インポッシブル』シリーズと『ジョン・ウィック』シリーズはどちらもリアリティを追求したアクションが”ウリ”な作品ですが、両者を比較してみると前述した2種類の違いがよくわかります。
『ミッション:インポッシブル』シリーズにはトム・クルーズが体を張ったスタントが多いですが、派手な死に方をするようなモブはほとんどいません。
つまり『ミッション:インポッシブル』シリーズはスタントそのものがショー的なエンターテイメントとして機能しているんです。
一方で『ジョン・ウィック』シリーズは、体が丸ごと飛んでいくような、ド派手な殺され方をするモブだらけですよね。こういった作品はスタントマンが身体能力を極限まで使い、影で映画を盛り上げる燻銀のようなスタントのスタイルを持っているんです。
そんなスタント魂を持った『ジョン・ウィック』シリーズですから、シリーズの節目である本作では、階段落ちは絶対にやらなければならないスタントだったのでしょう。
しかも世界最長の222段というから驚きです。
階段落ちで有名な作品といえば深作 欣二監督の『蒲田行進曲』ですが、間違いなく意識されていると思うので、ぜひこちらも鑑賞してみてください。
ちなみにですが、デヴィッド・リーチが立ち上げたスタント会社のスタッフなのか、ジョン・ウィックにシリーズ中何度も殺されている人物が多々いるんです。
特にスキンヘッドで髭に特徴のある人がいるんですが、少なくとも本作と1作目の『ジョン・ウィック』で、ジョン・ウィックに引導を渡されていました。
“見えない演技”を完成させたドニー・イェン
本作を語るのなら、ドニー・イェンについては避けて通ることはできないでしょう。
『イップマン』から始まり、近年ではハリウッドでも『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『ムーラン』などで強烈なインパクトを残し、カンフーアクションファンを魅了してやまないアクションスターです。
そんなドニー・イェンが本作で演じるのは盲目の暗殺者。
『座頭市』を意識したキャラクターであることは間違いないですが、実は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で演じたチアルートと”盲目”という点がかぶってしまっているんです。
そんなわけで本作のオファーを一度は断ったそうなのですが、蓋を開けてみれば『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』とは全く異なる”盲目の暗殺者”が完成していました。個人的には何十倍にもレベルアップしたような気がします。
カンフーアクションスターには例えば「少林寺出身」というように、得意とする型があり、必ずその癖がアクションに反映されてしまうのですが、ドニー・イェンの凄いところはどんな型でも完全にコピーしてしまう点にあると言います。
なのでドニー・イェンのアクション映画を見比べると、どれも全く異なるアクションを見ることができます。
本作で演じた盲目の暗殺者で素晴らしかったのは、”見えていない演技”が最高潮に極まっていた点だと思います。
前述した『座頭市』やAppleTV+の『See〜暗黒の世界〜』など、盲目の戦士を描いた作品はそれなりに存在しています。
『See〜暗黒の世界〜』もジェイソン・モモアが盲目の戦士を演じたポストアポカリプスSFで、『座頭市』を意識したシーンも多々あり、こちらもおすすめなのでぜひ!
しかしいずれも“目は閉じているけど見えている演技”で、第六感のセンサーがずば抜けていて、いわばスーパーパワーのような描写のされ方がされています。
一方で本作のケインは、本当に見えていない中で試行錯誤をして戦っているようにしか見えないんですね。もちろん人感センサーなどアイテムを駆使して、”見えない”を演出していたりもするのですが、それだけではなくアクションの細かい動作1つ1つが”見えない場合”について考え抜かれているように思えて仕方ないのです。
これは前述したような形にハマらない、カンフーアクションを知りつくしたドニー・イェンでなければ、辿り着けない境地だったと思います。
ジョン・ウィック流のスペキュレイティブ・フィクション
さて『ジョン・ウィック』シリーズといえば、独自の裏社会の押し広げ構築してきたグラフィックノベルのような世界観が特徴的です。この世界観の膨張は『ジョン・ウィック:チャプター2』で顕著に現れ、『ジョン・ウィック:パラベラム』で一旦でも到達点に達したように思えます。
本作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は、そんな出来上がった世界の中で展開される物語なわけですが、ここにきて『ジョン・ウィック』シリーズの世界観はスペキュレイティブ・フィクションなのだということに気がつきました。
スペキュレイティブ・フィクションとは、さまざまな点で現実と異なった世界を描いた作品の総称で、非常に有名なところでいうと、スチームパンクがそれに当たります。
スチームパンク的な作品を例に出すと、『ワイルド・ワイルド・ウエスト』や『移動都市/モータル・エンジン』などなどで、いずれも現実とは若干テクノロジーの進化した方向が異なっています。
スチームパンクの定義は、広義において蒸気機関が主流のまま、テクノロジーが進化した並行世界ということが言えますね!
『ジョン・ウィック』シリーズには蒸気機関が特徴的なテクノロジーが登場するわけではないので、「本シリーズはスチームパンクだ」と言っているわけではないのですが、『ジョン・ウィック』シリーズの裏社会は絶妙にローテクが使われているんですよね。
例えば本作ではとてつもなく大きな砂時計が2度も登場していたし、中央局?のような場所ではブラウン管のPCが使われていたり、賞金ボードには黒板が使われていたり。かなりローテクへのこだわりが強く、こう言ったこだわりがグラフィックノベル感を彷彿させているのかもしれません。
ちなみに『キルビル』はタランティーノのスペキュレイティブ・フィクションだと思っていますw
そんな世界観の中で新たに登場したのが、暗殺RADIO。ここでもまたレコードなどのローテクが世界観の担保に一役買っていた気がします。
願いが叶った真田広之の参戦
さて、個人的な思いが強いところになりますが、真田 広之についても言及しておきたいです。
というのも『ジョン・ウィック』シリーズが始まった当初から個人的に真田広之の参戦を切望しており、本作では僕が望んだ100%といっても過言ではない形で参戦果たしているからなんです。
真田 広之の殺陣には定評があり、『ラストサムライ』では共演したトム・クルーズの演技を食ってしまったため、真田広之の剣技のシーンは大幅にカットされたなんで逸話も残っています。
さらにキアヌ・リーヴスは千葉真一(J・J・サニー・チバ)のことを神(ゴッド)と崇めていますが、そんなゴッドの弟子が真田広之で、そもそも真田広之という芸名をつけたのも千葉真一なんです。
真田広之という名前は芸名で、真の字は千葉真一の真から受け継いだものなんですよ!
殺陣に定評があって、千葉真一の弟子ともあれば『ジョン・ウィック』シリーズに出演しない理由が全く見つからないんですよね。
そんな真田広之がジョン・ウィックの旧友であり、誉を重んじる役として参戦しているわけですから、終始眼福でしたよ・・・。
日本画には全く明るくないので、特筆したことは言えないのですが、大阪でのショットの数々は明らかに他のシーンとはルックが異なり、和を感じる構図になっていたかと思います。
特に夜桜と真田広之のシーンは最高でしたね。
強いていうのならば、散る美学があることは重々承知しているのですが、クライマックスの階段のシーンでジョン、ケイン、シマヅの三人が集結し、圧倒的な力で階段を駆け上る世界線の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』がみたかったとも思います。