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【ネタバレ】『デス・プルーフ』感想・解説・評価:舐めてた相手が凄腕スタントウーマンでした!!

おつかれさまです!オレンチです!

今回は『デス・プルーフ』について!行ってみましょうー!

作品情報

  • 原題:Death Proof
  • 制作:2007年/アメリカ
  • 上映時間:117分
  • レーティング:R15+

監督・スタッフ

  • 監督:クエンティン・タランティーノ
  • 制作:ロバート・ロドリゲス
  • 脚本:クエンティン・タランティーノ
  • 撮影:クエンティン・タランティーノ
  • 編集:サリー・メンケ

僕が並べたスタッフの中でタランティーノ以外が二人だけという、タランティーノの独り相撲みたいなスタッフィングですねw

タランティーノ以外の一人は制作のロバート・ロドリゲスは前作『キル・ビルVol.2』で劇伴を提供してもらったことで意気投合したのでしょう。ロドリゲスみずからノーギャラで音楽を提供してきたというのだから驚きですw

後述しますが、本作は元々『グラインドハウス』という一本の映画の一部であり、この出会いがなければ本作は生まれなかったでしょう。

もう一人は編集のサリー・メンケ!タランティーノ映画にこの人あり!と言えるほどの存在で、『レザボア・ドッグス』以来ここまで全てのタランティーノ作品の編集を担当しています。

惜しくも『イングロリアス・バスターズ』を最後に急死してしまいましたが、タランティーノが絶大な信頼をおく編集者でございます。

ちょっとほっこりするエピソードですが、「編集中はひとりの時も多くさみしいだろう」と思ったタランティーノは、撮影中なんどもフィルムのなかに「Hi!サリー!」というサリー・メンケへの挨拶を撮っています。

タランティーノ作品に出演した俳優のインタビューを聞くと、どれも楽しい経験だった!という意見を耳にしますが、サリーの挨拶を見る限り偽りのない意見なんだなぁと思います。

キャスト

  • カート・ラッセル
  • ゾーイ・ベル
  • ロザリオ・ドーソン
  • ローズ・マッゴーワン
  • メアリー・エリザベス・ウィンステッド

本作のキャストを語るにあたり、誰よりも前面にだして語るべきは、カート・ラッセルでもなく、ロザリオ・ドーソンでもなく、ガチスタントマンのゾーイ・ベルでしょう!

ゾーイ・ベルは『キル・ビル』でユマ・サーマンのボディダブルを担当したことをきっかけにタランティーノファミリーの仲間入りを果たし、依頼多くのタランティーノ作品に女優として出演しています。

彼女曰く、本作に登場するゾーイは彼女そのものだそうで、初の演技でも自然体で演じられたとのこと。『キル・ビル』でタランティーノと出会ってからは毎日が楽しい!と言った笑顔が本作でみせる笑顔そのものでした。詳細はブルーレイに収録されている”ゾーイ・ベルasスタントウーマン”をご覧ください!

また、彼女のハリウッド進出を追ったドキュメンタリー映画もあるのでオススメ!タランティーノと初対面の貴重な映像も観ることができますよ!

感想

まず誠に勝手ながら0.5刻みの5段階で僕の満足度を表すと・・・

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4.0と言った感じ!

やっぱり何度見ても楽しいし、何よりゾーイ・ベルがかっけぇぇぇ!!!

「あいつとっ捕まえる?」というセリフと笑顔から、ダッチ・チャレンジャーにまたがる姿のカッコよさたるや・・・ちょっと僕の乏しい語彙では表現しきれないですねw

ちなみに後半のスタントマン・マイクが撃たれた腕を治療しながら「WHY!!!?」と叫び泣いていますが、これはカート・ラッセルのアイディアだそうで、さすがベテラン俳優。作品の《気持ちのいい復讐》という落とし所をよく理解したうえでの提案だったのでしょう。

何といっても後半の復讐シークエンスがとにかく気持ちい本作ですが、ここが気持ちよく感じさせるために、巧妙な仕掛けが全編に施されているように感じました。

前半と後半

男の歯形でいっぱいらしい美尻のアップで幕をあげた本作ですが、本作は大きく分けて前半後半に分けることができます。

その区切りはあらゆる要素でわけることができ、

  • テキサス州とテネシー州のロケーション。
  • チーム・ジャングルジュリアとチーム・ゾーイ。
  • 昼と夜。

など。

それぞれの役割は《準備と実行》で、言うまでもなく前半が準備で後半が実行ですね。

では準備について紐解くと、ボコボコにしたら気持ちいだろうなと思える野郎の準備ですね。

それがカート・ラッセル in スタントマン・マイクです。

スタントマン・マイクのキャラクターを深掘りするために、前半の多くはバーで過ごしているんですね。

本来、スラッシャー映画に登場する殺人鬼のキャラクターを深堀するのは、同情を生んでしまい、恐怖が恐怖じゃなくなってしまう危険性があるためタブーなのですが、本作の目的は《恐怖》ではなく《快楽》なので、どんな奴か深堀することが非常に重要になってきます。

どんな奴か知っているからこそ、コイツが許しを請う瞬間にこの上なくザマァ!!な気持ちを感じれるわけです。

ゆえに前半はスタントマン・マイクの威圧感をだすため、横顔のクローズアップショットや、ナチョスを食べる口にフォーカスした超クローズアップショット、また煽りショットが多いです。

また準備期間が退屈しないよう、副産的な仕掛けもされています。

その代表がラップダンスですね。ラップダンスをするのかしないのか?(結局踊る)が程良い興味になって鑑賞者を引っ張ります。

また、ジャングル・ジュリアの脚に注目してほしいのですが、ところどころのシーンで彼女の脚が枠をイメージするものから飛び出しているんですよ。これは今後の展開を示唆するイメージシステムですね。

前半の時間帯が夜に展開されるのもポイントです。要するに悪者の領域ということですね。これに対して、反撃に出る後半は昼ということになります。

さて後半の実行とは、ボコボコの実行ですねw

これについては次の項で語って行きたいと思います。

本物の追われるカーチェイスと追うカーチェイス

さて、カーチェイス映画と言えば多くの人が『ワイルドスピード』シリーズを連想するのではないでしょうか。実際僕も車映画といわれるとパッと同シリーズが出てきますし、大好きなシリーズではあります。

しかしながらカーチェイス映画かと言われれば最近のシリーズ作品はSFであってカーチェイスではないですね。

では本物のカーチェイスとは何か。『バニシング・ポイント』をはじめ、『RONIN』や『フレンチ・コネクション』といった本物の道を本物の車が本物のドライバーによって爆走する映像。これがカーチェイスだと思います。

タランティーノが本作で撮りたかったものとは、本物のカーチェイスです。

本作の後半で、ゾーイ・ベルをボンネットに乗せたまま爆走し、スタントマン・マイクを乗せたダッチ・チャージャーがトラックと激突しかけるシーンがありますが、あのシーンはゾーイ・ベルを初め、ダッチ・チャンレンジャーを運転するスタントウーマン、ダッチ・チャージャーを運転するスタントマン、そしてトラックを運転するスタントマンという、業界のレジェンドが1つのフレームに収まった伝説的なシーンだそうですwもはや業界の人にしか分からない伝説的カットですねw

そんな後半はボコボコの実行。もっといえば、最近流行りの舐めてたスタイルに収まる流れだと思います。

要するに舐めてた相手が実は凄腕スタントウーマンだった!!ということですね。

『ジョン・ウィック』あたりから流行りだしたスタイルですが、タランティーノはずいぶん早く先取りしていました。

で、舐めてたスタイルに最も重要なのは、舐めてかかってきた相手が後悔を感じることによって生じるカタルシスです。

どのくらい制裁すべき相手なのか、後悔の念を鑑賞者にどれくらい伝わるかによって善し悪しが決まります。

このスタイルの頂点に立つのが『イコライザー』だと思っておりますが、本作も負けず劣らずのカタルシスを我々に与えてくれます。

前述しましたが、やり返されてスタントマン・マイクが泣き出すシーンはカート・ラッセル提案の演技でして、後悔=カタルシスという作品の落とし所を良く理解したカート・ラッセルの名提案といったところでしょう。

話をカーチェイスに戻しましょう。本作でタランティーノが描きたかったのは本物のカーチェイス。しかも贅沢にも追われるカーチェイスと追うカーチェイスの両方を1本に詰め込んでしまいました。

どういう分け方をしているかというと、我々鑑賞者が感情移入している主人公サイドを軸に考え、後半のカーチェイスが始まってからの前半、ゾーイ・ベルがボンネットの上でスタントマン・マイクに追われるシークエンスが追われるカーチェイス。反撃に出てスタントマン・マイクを追うシークエンスが追うカーチェイスです。

カーチェイスというものは追う者と追われる者の両者が同じシーンに存在して初めて成立するもので、どちら側で観るかによって映画体験は180度変わります。

タランティーノはやりたいカーチェイスを1本の映画にギュッとつめこんでしまったのですねw

『グラインドハウス』として公開された意味

最後に『グラインドハウス』という作品の意味について少々触れてみたいと思います。

前述の通り『デス・プルーフ』とは『プラネット・テラー』とその他5本のフェイク予告編によって構成されたオムニバス映画であり、全てを通して1本の映画として成っています。

そもそもグラインドハウスというのは、いわゆるB級映画を2、3本立てで公開していた映画館のことでタランティーノやロドリゲスに言わせてみれば古き良き映画館といったところなのでしょう。

ゆえに長編映画を二人で撮影し、それを抱き合わせることで当時の雰囲気を再現したのが『グラインドハウス』であり、クローズアップして観れば『デス・プルーフ』という作品の良さが見えてきますが、当時の雰囲気を体験することが本作のロングショット的意味であり、二人の監督が目指したところなんだと思います。

また、フェイク予告編も《次の掘り出し物》を探す醍醐味であり、当時の楽しみ方なのでしょう。結果的に『マチェーテ』と『ホーボー・ウィズ・ショットガン』は長編映画として、後に作られることになりますしね。

残念ながら、本国アメリカ以外では”グラインドハウス”という文化自体がなかったためか、2本の単独作品として公開されてしまいました。

1本ずつ見てもそれなりに楽しい作品たちではありますが、作品をロングショットで楽しむために、是非とも『グラインドハウス』として体験していただきたいなと思います。

さらにもう一つ、『グラインドハウス』で観るべき意味を挙げると、ローズ・マッゴーワンがその意味を担います。

彼女は全く別人の役で、『プラネット・テラー』『デス・プルーフ』の両作品に出演しているのです。

これが意味するところは、”グラインドハウス”作品には必ずといっていいほどお抱えの俳優がいて、2,3本立てにはよく同じ俳優が出演していたそうです。ローズ・マッゴーワン自体が、”グラインドハウス”という当時の雰囲気を醸し出す舞台装置の一つとして機能していたんですね。

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