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【ネタバレ】『イエスタデイ』感想・解説・評価:咎めるではなく、讃える

おつかれさまです!オレンチです!

もしビートルズを知っているのが自分だけになってしまったら・・・?

この地球上に生きていれば、一度は耳にしたことがあるであろうビートルズ。

たとえバンド名を知らなくても、その曲を聞いたことがない人はいないはず。

僕はと言えば、大ファン!!とまではいかないものの、ビートルズしか聞いていなかった時期もあったりと、そこそこ曲は知っているつもりでございますw

そんな半・にわかビートルズファンの僕が『イエスタデイ』を見てきましたよ!

作品情報

  • 原題:Yesterday
  • 制作:2019年/イギリス
  • 上映時間:117分

予告編

監督・スタッフ

  • 監督:ダニー・ボイル
  • 制作:リチャード・カーティス他
  • 脚本:リチャード・カーティス
  • 撮影:クリストファー・ロス
  • 編集:ジョン・ハリス

監督は『T2/トレインスポッティング』が記憶に新しいダニー・ボイル

近年では『スラムドッグ・ミリオネア』あたりが有名でしょうか。

オレンチ

ちなみに僕の初ボイルは記憶が正しければ『28日後・・・』と超ミーハーな入りで、続くユアン・マクレガーと再タッグを組んだ『普通じゃない』も割りとお気に入りです。

制作・脚本は『アバウト・ア・タイム』などの監督を務めるリチャード・カーティス

彼の手がけた作品をのぞいてみると、『Mr.ビーン』をはじめ『ノッティング・ヒルの恋人』や『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』などロマンティック・コメディを多く手掛けており、今回の『イエスタデイ』も得意な範囲と言えるでしょう。

撮影のクリストファー・ロスは近年芽が出てきたと言った感じで、自作の『CATS』にも注目!

編集のジョン・ハリスは時代を代表するイギリスの編集者と言えるのではないでしょうか?

その理由は、『レイヤー・ケーキ』『キック・アス』『キングスマン』といった近年イギリスを代表するヒットメーカー、マシュー・ボーン監督作を多く手掛けているため。

ダニー・ボイルとも前作『T2/トレインスポッティング』を始め3作ほどチームを組んでいます。

キャスト

  • ジャック・マリク:ヒメーシュ・パテル
  • エリー・アップルトン:リリー・ジェームズ
  • ロッキー:ジェル・フライ
  • エド・シーラン
  • デブラ・ハマー:ケイト・マッキノン
  • ジェームズ・コーデン

主演のヒメーシュ・パテルは今回の作品が初対面!恐らく初対面の方が多いと思いますが、これは意図的に知名度の低い役者をキャスティングしていますね。

これが誰もが知っている俳優さんだった場合、本作のコメディの核になっている突然現れた無名の天才というキャラクターが破たんしてしまいます。

オレンチ

ユアン・マクレガーだったとしたら、ユアンがビートルズをうたってる!という点に気が行っちゃいますw

ヒロインは『シンデレラ』『ベイビー・ドライバー』と順調にヒロイン街道を進んでいるリリー・ジェームズ

そして個人的に注目すべきは、『ゴーストバスターズ(16)』で怪演あらため快演が素晴らしかったケイト・マッキノン!今回どんな一面をみせてくれるのか非常に楽しみであります!

感想

まず誠に勝手ながら0.5刻みの5段階で僕の満足度を表すと・・・

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4.5と言った感じ!

ビートルズの映画で真っ先に思いつくのはジム・スタージェス主演の『アクロス・ザ・ユニバース』でこちらも楽曲が最高でした。

やはりと言いますか、当たり前なんですが、ビートルズの楽曲が最高ですね!この点について唯一欠点を挙げるのであれば、どの曲も最後まで聴きたくなってしまうということですw

ちなみに『アクロス・ザ・ユニバース』をちょこっと検索したら、ルーシー役のエヴァン・レイチェル・ウッドがHBO発のドラマ『ウエスト・ワールド』のメインキャスト、ドロレスだったといことに軽く衝撃を受けています。w

いろんな意味で成長なさった・・・。

設定の荒さが目立つ部分は少なくないですが、リチャード・カーティスの作品に荒さを突っ込むのは野暮で無意味ですね。

そんなことよりも素晴らしい楽曲と、”ある展開”に思いっきり心を洗われた作品でした。

後追い世代としてのファン

僕は約10年前の学生時代にビートルズの有名曲ほほぼ網羅した青盤と赤盤から入った後追い世代のビギナーなのですが、本作に登場する楽曲は当然ながら全部知っているんですよ。たぶん1曲も知らない人はこの世に存在しないんじゃないでしょうか。

ゆえに本作のメインプロット(=世界中がビートルズを知らないという異様感)が成り立つんですよね。

この手のif映画(もしも映画)は異様感が強ければ強いほど輝きます。

さて本作はビートルズのことを知っていれば知っているほど楽しさを増す映画ではありますが、ビートルズを良く知らない若い世代にも親しみやすい作りとなっています。

主人公ジャックは、ミュージシャンでありビートルズをリスペクトする人物ですが、世代的にはビートルズ後追い世代なんですよ。

ゆえにビートルズの後進的バンドであるオアシスがきっかけでエリーと出会っています。

つまり、リアルタイム世代の人とは違ったビートルズへの入りが妙にリアルなんですよ。リチャード・カーティスの脚本は、ビートルズがいなくなったことによって引き起こすバタフライエフェクト的影響(ビートルズに影響を受けたバンドが全て存在しないはず等)の外的設定はかなり雑ですが、個々人に一つの偉大なバンドが与えた影響の内的設定は非常に練られて作られていたように思えます。

思い返せば『アバウト・ア・タイム』の外的設定も(わが子が消えたり復活したり)むちゃくちゃ雑でしたしねw

そんな後追い世代のジャックと共に、歌詞を思い出したりゆかりの地を訪れるシークエンスは、ビートルズのことを深く知れる作りになっていますよね。

つまり本作イエスタデイは、ビートルズ後追い世代やこれから知る世代に対して、ビートルズへ入るキッカケ的な願いが込められているように感じました。

ちなみに脚本のリチャード・カーティスは幼いころビートルズを出待ちすほどの筋金入りなファン。ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』とリチャード・カーティス作品『パイレーツ・オブ・ロック』のジャケットを比較すると、完全に意識してますよねwビートルズへの変わらぬ愛が良く伝わってきますw

小ネタと曲順

監督のダニー・ボイルも、脚本のリチャード・カーティスもさすがリアルタイム世代。ビートルズにまつわる細かい小ネタをあらゆるシーンにぶっこんできます。

正直ビギナーな僕にはわからないネタだらけだったんですが、「たぶんこれってビートルズネタだよな・・」と思えるセリフやしーんが数多にあって・・・w

また、曲順もそれぞれのシチュエーションに合った曲が使われていてストーリーと曲の親和性が高く非常に気持ち良かったです。

ロシアに行けば「Back In The USSR」を歌うし、不安でたまらない時は「Help!」でその気持ちを表現し、愛の告白をするときは「All You Need Is Love」。締めくくりは人生を歌った「Ob-La-Di,Ob-La-Da」。

この流れで「Ob-La-Di,Ob-La-Da」は正直しびれたというか思いっきりカウンターパンチを食らったような気持ちになりました。

私ごとですが、今僕は1年ほど前脚を骨折してから大好きだったスケボーはほぼ絶望的になり、もっと好きなスノーボードが出来るか否かの状況に立たされています。

あまりにも生きがいを失った気がして、最近落ち込むことが多かったんですが、人生それだけじゃないと改めて感じた瞬間だったんですよね。25年以上も付き合いのある人生において大切な嫁もいますし、守るべき2人の子供もいます。

厚かましくも、ジャックとエリーの家庭が僕の家庭とダブって見えちゃいました。

と、私ごとに脱線してしまいまいしたが、ビギナーながら「I Am The Walrus」とか「Come Together」なんかもどこかで聞けたらうれしかったなw

咎めるではなく、讃える

さて本作のダニー・ボイルの映像表現ですが、他人の音楽で有名になることで、徐々に不安を感じていくジャックの心をうまく表現していましたね

その理由はダッチアングルショットの多用ですね。

ダッチアングルショットとは、被写体を斜めに移すショットのことで、被写体の不安を表すのにしばしば使われます。

またライブ前の楽屋シーンでは画面の中心から外れた位置に座ったジャックを見下ろすショットが印象的でした。

マイレージ・マイライフ』のアナ・ケンドリックを見降ろしたショットに酷似していましたが、見下ろしショットというのは、被写体を弱く見せる効果があり、中心から外れたアシンメトリーな構図は無秩序といったイメージを表します。

要するにボロボロになったジャックを良く表現しているということです。

ここまで、ジャックの不安を我々観客に与えておき、最後のトドメは黄色い潜水艦です。これは当然ビートルズの名曲「イエローサブマリン」のメタファーでところどころ不審な目でジャックを見ていたロシア人男性とイギリス人女性がこの世界でビートルズを知っていることを確定させます。

ここで感じることは、事実上ビートルズの曲を盗作したことになって名声を得たジャックが咎められるだろうという予想です。

しかし、ここで心が洗われるどんでん返しが成されます。

彼らはジャックを咎めるのではなく、素晴らしい曲をこの世界に残してくれてありがとう。とジャックのことを讃えたのです。

これが、記事の冒頭で述べた”ある展開”です。

正直、咎めらることを怖がっていた自分は心が汚れていたなと思ってしまいましたし、”愛と平和”を歌ってきたビートルズを体現した行為だと思いました。

これがきっかけで映画は第三幕へと入って行きジャックは2つのことを告白する決心をするのですが、正直いってベスト級に素晴らしい第二ターニングポイントだと思います。

今の世の中に必要なもの、それは人の粗を探して責めるのではなく、讃えあい助け合うことなんだと本作が教えてくれた気がしました。

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