オレンチ
はじめまして!オレンチと申します!
今回は『スパイダーマン3』について書いて行こうと思います。
メガホンを取るの前2作から引き続きサム・ライミ。主演も前作から引き続いてトビー・マクガイアです。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に向けた予習的な鑑賞なのでサクッとレビューしてみます。
というわけで以下目次より行ってみよう!
この記事はネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
『スパイダーマン3』のネタバレ感想・解説・考察
シリーズにおけるプロデューサーの重要度
サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズを締めくくるのが本作『スパイダーマン3』なわけですが、キチンと本作に向かって物語の歩みを進めている点がサム・ライミ版『スパイダーマン』のパイオニア的な所かなと思います。
というのもサム・ライミ版『スパイダーマン』よりも前のアメコミ映画は、《三部作で大きな一つのストーリー》という構造で作られたものが無かったんです。この件は前作『スパイダーマン2』評で細かく触れているので、そちらもぜひ参考にしてもらえるとうれしいです。
【映画】『スパイダーマン2』|解説ネタバレ感想・伏線・考察|最先端の技術が可能にしたドック・オク
サム・ライミ版『スパイダーマン』から《三部作で大きな一つのストーリー》を抽出してみると一つ《ピーターとハリーの物語》と言えるかなと思います。
オレンチ
ここにMJを追加して《ピーターとハリーとMJの物語》と言うこともできますね。
このようにシリーズ全てをロングショット的に見た時、物語が浮かび上がってくるようなシリーズは記憶に残りやすい完成度があると思います。
サム・ライミ版『スパイダーマン』の堅牢な完成度に貢献した人物としてサム・ライミは言うまでもないんですが、おそらくケヴィン・ファイギの貢献も大きいのではないかと思います。
というのも『スパイダーマン2』のオープニングクレジットでケヴィン・ファイギの名前があったことに驚いたんですよね。調べていると『スパイダーマン』~『スパイダーマン3』まで関わっていたようで、やはりな。と思いました。
ちなみにケヴィン・ファイギは、MCUのプロデューサー。
MCU作品全ての舵とりをしており、MCU作品の発表で名前と顔を覚えた方も多いのではないでしょうか。ケヴィン・ファイギにまつわる様々なエピソードから、興行よりも作品の完成度を重視していることがわかるプロデューサーなんですよ。
例えばドクター・ストレンジ役のベネディクト・カンバーバッチは一度降板しているのをご存知でしょうか。
スケジュールの関係による降板ですでに別の俳優で準備が進んでいたのですが、監督のスコット・デリクソンはカンバーバッチ以外考えられず、ケヴィン・ファイギに相談したところケヴィン・ファイギも同意見だったため、公開を延期してまでカンバーバッチのスケジュールが空くのを待ったそうです。
このようにケヴィン・ファイギがいなければMCUは『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで絶対にたどり着いていないと思いますし、逆を言えば彼の様な人物がいなかったから『スター・ウォーズ』シークエルは大失敗をしたのだと思います。
さらに挙げると『マンダロリアン』の大成功はデイブ・フィローニという人物がいたおかげです。
オレンチ
もちろんジョン・ファヴローの貢献は多大なものですが、彼の相談役としてデイブ・フィローニがいたそうです。
こうしてみると如何にシリーズに一貫したプロデューサーが重要なのかよくわかりますよね。
というわけで次の章から、もう少し細かく三部作における『スパイダーマン3』を考察してみます。
未解決の葛藤を精算する最終章
さて先ほど「シリーズを締めくくる」とお話しました。「締める」ということは広げたものがあるわけで、この場合1作目と2作目ということになります。
また『スパイダーマン』評で1作目はヒーローのオリジン(原点)を描くことで共感や憧れを抱いてもらい、『スパイダーマン2』評で2作目はヒーローとなった日常とその裏にある葛藤を描くことで、キャラ性を深ぼると解説してきました。
では3作目で締めくくるためにはどうしたら良いのか。それはこれまで見解決だった葛藤を清算すればいいのかなと思います。
『スパイダーマン3』にはサンドマンが登場したり、グウェン・ステイシーが登場したり、ブラックスパイダーマンや待望のヴェノムが登場したりと過去2作に比べると圧倒的に情報量が多く、盛り過ぎと揶揄されてしまいがちですが、その骨格にある《ピーターとハリーの決着》というテーマを発掘すると、非常に筋の通った物語が見えてくるはずです。
1作目でハリーはスパイダーマンに父親を殺されたと思いこみ、観客はスパイダーマンの正体がピーターだと知っています。この瞬間から運命のいたずらとも言える未解決の葛藤が生まれ、2作目でも清算されることはありませんでした。
親友だったはずの二人が命をかけて戦う皮肉な運命は、未曾有の事態だと言えますよね。
3作目ではこのように、過去2作では経験したことのない未曾有の事態を起こすことによって、シリーズにクライマックス感を生みだしているとも分析できそうです。
ともすると先述したヴェノムやサンドマンは、ピーターとハリーの確執と精算を表現する手助けする役割を担っているともいえます。
とりわけヴェノムとサンドマンが手を組んだことによって、劣勢となったスパイダーマン(ピーター)をハリーが救いの手を差し伸べるという流れはとても上手くいった清算の流れだったと思います。
というわけで、シリーズ3作を通してアメコミ映画3部作を俯瞰的に評をしてきましたが、面白いことにこの構図は、ハリウッドで9割は使われているという「三幕構成」と呼ばれる脚本術に非常によく似ています。
「三幕構成」については当ブログでも詳しく解説していますので、こちらも参考にして頂けたら幸いです。
マルチバース本格始動を託されたサム・ライミ
最後は本作のレビューから少し離れて『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』に関わるお話しをしていこうと思います。
2019年公開の『スパイダーバース』やMCUのフェーズ4あたりから、本格的にアメコミ実写映画にマルチバースという概念が取り入れられつつあります。
そんな中、ついに物語の核となる部分にマルチバースを採用した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に大きな期待がかかっていますよね。
しかしながら『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のマルチバース化はおそらく序章。MCUにおいて本格的にマルチバースが始動するのは『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』ではないかと思われます。
もちろん『マルチバース・オブ・マッドネス』というタイトルからも読み取れるのですが、託された監督がサム・ライミという点が、マルチバース本格始動という予言に強い説得力を与えています。
というのもフェーズ3あたりからMCUの監督はおよそアメコミ映画とは縁が遠そうな(サンダンス映画祭に出てきそうな)インディーズ畑出身の映画監督が選出されていました。
フェーズ4の大作とも言える『エターナルズ』に『ザ・ライダー』や『ノマドランド』のクロエ・ジャオという点からも、監督選出のイレギュラーさがよく分かると思います。
そんな中、いわば『スパイダーマン』シリーズでアメコミ映画監督の匠となったサム・ライミが『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』の監督に選ばれているんですよ。
発表があった当時は、イレギュラー味の弱い選出に否定的だったのですが、今回サム・ライミ版の『スパイダーマン』シリーズを見返してみると『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』の監督はサム・ライミが適任だと思わざるを得なくなりました。
というか『スパイダーマン』シリーズでアメコミ映画三部作の青写真を作ったサム・ライミの構成力がない限り、マルチバース本格始動の物語は扱えないと思うんですよ。
『マイティ・ソー/バトルロイヤル』や『キャプテン・マーベル』、『ブラック・ウィドウ』や『エターナルズ』は実験的な監督選出でしたが、ここにきてサム・ライミを監督に当てたあたり、いかに『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』という作品が今後のMCUにとって重要なものになるということの裏返しではないでしょうか。
というわけで、『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』。楽しみです!