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【映画】『モンスターハンター』解説ネタバレ感想・伏線・考察|【評価】

オレンチ

はじめまして。オレンチと申します。

今回はお話しする映画は『モンスターハンター』です。

メガホンを取るのは日本では「ダメな方なアンダーソン」と揶揄されがちなポール・W・S・アンダーソン。主演はアンダーソン監督作では常に主演を演じる妻ミラ・ジョヴォビッチです。

ちなみにポール・W・S・アンダーソンを「ダメな方」と揶揄した場合、「出来る方のアンダーソン」はポール・トーマス・アンダーソンです。

というわけで以下目次より早速行ってみよう!

『モンスターハンター』のネタバレ感想・解説・考察

映画『モンスターハンター』における物語の構造

『モンスターハンター』はカプコンが誇る人気TVゲームの一つで、世界レベルで莫大なプレイヤー数が参加するオンラインアクションゲームです。2004年に初めて発売されて以来、今なおコンスタントに新作が作られ続けている長寿シリーズとなっています。

オレンチ

個人的に最もプレイしたのは『モンスターハンター2』か『フロンティア』ですっ!世代がバレるw

そんな人気ゲームがハリウッドでまさかの実写映画化を発表。喜びも束の間、名乗りを上げたのがポール・W・S・アンダーソン&ミラ・ジョヴォビッチだったことから一抹の不安を隠しきれなかった人も多いのではないでしょうか。

出来上がった映画『モンスターハンター』の前半部分は、「戦地で偵察中だった小隊が突如として現れた砂嵐に襲われ気を失ってしまう。目が覚めると元いた場所とは違う砂漠に移動しており、見たことのない巨大なモンスターに襲われる」と言った感じと言えるでしょう。

この前半部分を見る限り、おそらく『モンスターハンター』をプレイしたことのある人にとって一番最初に「コレじゃない感」を感じてしまったポイントは、現実世界の存在かと思います。

ゲーム『モンスターハンター』をそのまま映画化するなら現実世界の存在は不要であり、モンスターとそのモンスターを狩猟するハンターたちの世界のみを描くファンタジー作品になっていたでしょう。

このように「異世界」のみが存在する設定を《単一世界系ファンタジー》と呼ぶとします。

『ロード・オブ・ザ・リング』はファンタジー作品を最も代表する《単一世界系ファンタジー》と言えるでしょう。

ドラマですが『ゲーム・オブ・スローンズ』も壮大な《単一世界系ファンタジー》です。

一方で本作『モンスターハンター』は現実世界と異世界が混在する設定で、このような設定を《多次元系ファンタジー》と呼ぶとします。

実は小説や映画のファンタジー作品は《多次元系ファンタジー》であることがほとんどです。

さらに《多次元系ファンタジー》は大きく分けて、世界間を自由に行き来できるか否かでという二つの構造に分けることができます。

前者(異世界間を行き来できる)に作品は『ハリー・ポッター』が代表的と言えるでしょう。

対する後者(異世界間を行き来できない)は『アリス・イン・ワンダーランド』がその典型と言えるでしょう。

映画『モンスターハンター』の構造をこの中に当てはめると、異世界間を行き来できない多次元系ファンタジー作品となりますよね。

このような異世界間を行き来できない多次元世界を描いた構造を《異郷訪問譚(いきょうほうもんたん)》と呼びます。

異郷訪問譚は古典文学にも多く見られ、例えば『浦島太郎』は典型的な異郷訪問譚だと言えます。さらに異郷訪問譚のルーツは神話まで遡ることができ、例えば『古事記』における『山幸彦と海幸彦』など。ちなみに『山幸彦と海幸彦』は『浦島太郎』のルーツにもなっています。

また『ギリシア神話』における『オルペウスとエウリュディケ』の物語も異郷訪問譚として数えることができます。『オルペウスとエウリュディケ』は蛇に噛まれて死んでしまった妻エウリュディケを、夫オルペウスが冥界へと降りていくお話しです。

このように異郷訪問譚は、遡れば神話レベルで古くから人々に親しまれた構造なんです。

ともすると映画『モンスターハンター』はDNAレベルで愛される構造を持っていると言えそうです。

このように構造レベルで映画を抽出するとすれば、映画の見え方は大きく変わる可能性を秘めています。見え方が変われば「コレじゃない感」は存在しないのかもしれません。

映画『モンスターハンター』における物語の構成

さて映画『モンスターハンター』の構造は古くから親しまれているもので、言い方を変えれば王道です。そんな王道な構造をもった『モンスターハンター』ですが、個人的には構成が上手くいっていなかったように感じるのです。

例えるなら構造は物語を入れる箱の形で、構成は箱の中をどのようにして整理するかと言った感じです。

異郷訪問譚というのは基本的に成長する余地を残した主人公が、異世界を旅する流れの中で学びを得て元の世界に戻ってくるというテーマを持っています。

オレンチ

何を成長するかは作品ごとのテーマやメッセージによってそれぞれです。

そのため第一幕で主人公に何が足りないのかを示し、第二幕で成長するために必要な障壁を与え、第三幕で成長した成果を発揮するという構成になるのが普通です。

つまり異世界の訪問を語り部に主人公の内面の成長を描くのが異郷訪問譚というわけです。

例えばディズニー映画の『魔法にかけられて』は異世界(ジゼルから見た現実世界)を訪問することで、真実の愛について学びを得る物語でした。

本作『モンスターハンター』では主人公に足りないものを示す暇もなく、あっという間に異世界へ飛ばされるため、主人公アルテミスという人物がどのようなひととなりなのかわかりません。そのため異郷訪問譚の基本構成に寄り添えない構成になってしまっていました。

その代わりとして、ディザスター映画やモンスターパニック映画としてのニュアンスをとり言えるという面白い試みをしています。

しかしながらディザスターやモンスターパニックとしても構成がうまくいっていないように思えます。

ディザスターやモンスターパニックでは、やはり第一幕で主人公となる人物の、テーマにマッチしたスキルを提示する必要があるのです。

例えば『ジュラシック・パーク』では第一幕で、主人公アラン博士の恐竜に対する権威ある知識が披露されています。この人物について行けばなんとか危機を脱出できそうです。

また数年後の続編『ジュラシック・ワールド』では第一幕で、主人公オーウェンによる恐竜テイムが披露され、彼のサバイバル技術がよくわかります。

要するにディザスターやモンスターパニック映画というのは、主人公がそのテーマのスペシャリストである必要があり、そのスキルを第一幕で証明する必要があるのです。第二幕では立ちはだかる様々な障壁をスキルの応用によって乗り越えていく演出に面白みを感じることができます。

故にディザスターやモンスターパニック映画では主人公の内面的成長が異郷訪問譚ほど顕著でなくても成立するのです。

余談ですがディザスターやモンスターパニック映画の中から主人公のスペシャリスト性を排除し、内面的成長を描くことで成功している作品もあります。

スティーヴン・スピルバーグ監督の『宇宙戦争』は主人公レイ(トム・クルーズ)が危機的状況の中で父親としての自分を取り戻す物語でした。

ローランド・エメリッヒ監督の『2012』もまた、主人公ジャクソン(ジョン・キューザック)が人類滅亡の危機の中で家族との絆を取り戻す物語です。

もちろんアルテミスも戦闘のスペシャリストなのだとは思うのですが、そのスキルを証明する描写が大きく欠けていたかと思います。

エモーショナルさに欠けた構図・演出・劇伴

さきほど、あっという間に異世界へ飛ばされる第一幕を否定的に語りましたが、そのこと自体が悪いというわけではありません。

主人公のひととなりをおざなりにしても上手くいっている映画はたくさんあります。

その場合に重要となってくるのが構図や演出、そして劇伴です。

まず構図ですが、本作の場合モンスターの狩猟時の構図が最も重要になりますよね。本作の構図が失敗していたかというとそうではなく、どの狩猟シーンもキチンとした構図になっていました。

しかし悪く言えば真面目すぎなので、あっと驚くような──印象に残るような構図がなかったように思えます。さらに似たような構図・演出が続くのも面白みに欠けていて、例えば車両が宙を舞う状況を車内から見たようなシーンはざっと数えるだけで3回もあります。どれも瓜二つの出来栄えで、中で舞う人の数や服装が違うだけでした。

またアルテミスとハンター(トニー・ジャー)の殺陣も立て続けに複数回のシーンで挿入されており、ここでは物語の停滞が起きてしまっているように感じます。

長い1つの殺陣シーンではなく、時間や場所が切り替わるため複数のシーンとして描かれてしまっていることが大きな原因です。

個人的に最もエモーショナルさにかけてしまっているなと感じた点は劇伴にありました。ここはゲームのファンとしてのエゴがあるかもしれませんが、せめて重要な場面だけでもゲームの劇伴を用いて欲しかったと強く感じます。

2004年に発売された『モンスターハンター』をオンラインでプレイした経験のある人は、初ラオシャンロン戦で、砦の上に立った時に流れる劇伴の感動は全員が共通できる感覚ではないでしょうか。

目配せ的なきらいが強いですが、ゲームの映画化である以上、あの頃を思い出す演出があっても損はしないと思います。昔よく聴いていた音楽を聴くと、その頃の思い出が蘇るなんてことがありますよね。このような現象をプルースト現象と呼ぶのですが、作劇にプルースト現象を用いても良かったのかなと思います。

目配せで言うと、ペイント弾や肉焼きセットなどゲーム経験者ならクスッとくる演出が多々ありましたが、個人的にエモーショナルが沸き起こると同時にふっと消えてしまったのが剥ぎ取りです。

ディアブロスを剥ぎ取っているシーンではエモーショナルが沸き起こったのですが、角竜の甲殻の用途がまさかの担架だったことに愕然としてしまいました。

オレンチ

ちなみに主人公アルテミスのモチーフはギリシア神話に登場する狩猟の女神アルテミスから着想を得ているとしてまちがいないでしょう。

モンハンプレイヤーなら主人公につけそうな名前ですねw

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