お疲れ様です!オレンチです!
ほそぼそとタランティーノを見返しております。
今回は4作目の『キルビルVol.1』。
はじめて鑑賞したのは2003年の劇場。多分中学生くらいだったと思います。
中学の僕にはまだまだこの作品は早かったらしく、良さがまるでわからずでした。
あれから16年、ひさびさの鑑賞です。
ではでは『キルビルVol.1』イッチマイナー!!
作品情報
- 原題:Kill Bill Vol.1
- 制作:2003年/アメリカ
- 上映時間:113分
あらすじ/予告編
史上最強と言われた女エージェントのザ・ブライドは、結婚式当日にかつてのボス、ビルの襲撃を受け、夫や身ごもった子供まで殺されてしまう。4年後、昏睡状態から目覚めた彼女は、ビルへの復讐を決意する……。(映画.comより)
監督・スタッフ
- 監督:クエンティン・タランティーノ
- 脚本:クエンティン・タランティーノ
- 制作:ローレンス・ベンダー
- 編集:サリー・メンケ
- 撮影:ロバート・リチャードソン
オレンチ
今回からロバート・リチャードソンが参加しましたね!ここからワンハリまでタランティーノの撮影監督を務めるお方です!
キャスト
- ザ・ブライド:ユマ・サーマン
- ビル:デビッド・キャラダイン
- エル・ドライバー:ダリル・ハンナ
- バド:マイケル・マドセン
- オーレン・イシイ:ルーシー・リュー
- ヴァニータ・グリーン:ヴィヴィカ・A・フォックス
- 服部半蔵:千葉真一
- GOGO夕張:栗山千明
オレンチ
記事の後半に千葉真一とタランティーノのちょっといい話をご用意していますよっ!
感想・解説
まず大前提として『キルビル』にはVol.1とVol.2があり、元々は1本の脚本として書かれていたこともあり、2つ合わせて1本の映画ということ。
すなわち2つ見て初めて正当な評価を下せる──。と思ってはいるのですが、この記事を執筆している時点でVol.2は遠い過去の記憶でございます。
よって現段階でこの記事はVol.1のみを見た場合の記事となります。
当然ながらVol.2は執筆後鑑賞予定でございますので、この記事をリライトするか。総評をVol.2に書き込むか、はたまた総評用の記事を書くか。
このどちらかを選択しようと思いますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
ではでは気を取り直して。
「わかりにくい」を「わかりやすく」
本作は人生を狂わされた花嫁が、5人の殺し屋へ復讐する超シンプルな復讐劇。
復讐という推進力をもって展開されるのはタランティーノ的カンフー映画であり、チャンバラ映画であり、マカロニウエスタンです。
つまりすげー強い奴が個性豊かな悪者を成敗していくお話。
ゲームをする人なら馴染みやすい構成ですよね。小島秀夫氏の『メタルギアソリッド』なんかは構成がほぼ同じであることからきっと同じような映画に影響されてきたんだろうな~と思って調べたらタランティーノも秀夫しも同じ63年生まれでした。
ヤッパリナーー!
で、タランティーノにしてみたら至極わかりやすい脚本になったわけですが、それには理由があります。
なぜなら世界観がめちゃくちゃわかりにくいから!!
ただし、上に挙げたカンフー映画やチャンバラ映画といった類いの映画はわかりやすくて然るべきなので、タランティーノが「わかりやすさ」と「わかりにくさ」の中和を図ったかどうかは定かではないですが、結果的に良い働きをしていますね。
ヤクザが仮面の個人軍隊を持っていたり、その幹部が鎖付きの鉄球を扱う女子高生だったり、沖縄で服部半蔵が刀匠をしていたり、クセのディストピア観たいな世界観で、過去作の様なタランティーノの”作風”を発揮されたらカオスの極みみたいな難解映画になっていたかもしれませんねw
タランティーノパンク
冒頭、ボコボコにリンチされたザ・ブライド(ユマ・サーマン)が床に横たわる白黒のショットから始まります。
白黒ショットであるが故に痛々しさの想像を掻き立てザ・ブライドに感情移入していく──。脚本術的にいえばインサイト・インシデント(=ツカミ)としてインパクトのあるファーストショットでした。
続くヴァニータ・グリーンとの決闘シーンは、激しい殺陣と流血の被写体に対し、ポップカラーの背景といった構図になっていて鑑賞者の住む現実との乖離を象徴しています。さらには大胆にもかなり長尺なアニメシークエンスを入れることで現実との乖離に拍車をかけます。
オレンチ
ちなみにタランティーノに言わせるとアニメも実写もなく、どちらも映像技法のひとつにすぎないそうですよ。なんかかっこいいね!
ここまでくれば、続く沖縄の服部半蔵や、鎖鉄球の女子高生、飛行機に備え付けられている刀ホルダーなんてどうでもよくなっているという寸法です。
ザ・ブライドの字の汚さとかすげー細かいとこが気になったり、「マルの大きさぐらい揃えろや」と思ったりするんですがまぁそれはいいや。
いずれのしても世界観に没入させていくのが上手いですよ。
夕焼けはあり得ないくらい真っ赤だし、飛行機から見た東京の街並みは一昔前の特撮さながらミニチュア撮影だし。(たぶん特撮をやりたかったんでしょうw)
ちょいとチープな世界で大真面目に殺しあう。この違和感が何ともクセになるんです。
本作はもはやクエンティン的スペキュレイティブ・フィクション。タランティーノパンクですね。
ただ前述の違和感だけじゃ鑑賞者の心は引き続けれません。ちゃーんと魅せる演出もしてますよね。
とりわけ、オーレン・イシイ(ルーシー・リュー)が青葉屋に入場してくるシーンが最高にクールです。
音楽のビートに合わせてジャンプカットでオーレンに寄っていく──。まるでミュージックビデオのようなスピード感によって観ているだけでアドレナリンが放出されそうです。
ミュージックビデオ繋がりで、ある批評家はタランティーノの脚本はラップに近いと言います。
会話が長くても聞き入れるのは脚本に一定のリズムがあるからだと。英語のリスニングができればもっと理解できる部分があるのでしょう。
そういえば、本作もFUCKが目的のバックのバックシートで一夜を過ごしてましたね。
なんならタイトルだって韻を踏んでる徹底ぶりです。
JJサニー千葉とタランティーノのちょっといい話
最後に千葉真一とタランティーノの本作にまつわるちょっといい話を一つ。
千葉真一の誕生日会になんとタランティーノが現れたそうです。
大勢が千葉真一に誕生日プレゼントを持ってくる中、なんとタランティーノは手ぶら。
別に期待していたわけじゃないけど「なんももってこないんかい」と思った千葉真一でしたが、
タランティーノの口から「千葉さん。今日は誕生日プレゼントをもってきたんですよ。僕の映画に出演してほしい。僕のプレゼントを受け取ってくれますか?」
というわけで、服部半蔵の役が生まれたそうです。
粋だな!タランティーノ!!