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『どですかでん』ネタバレ感想・解説・考察|黒澤明が初めて撮ったカラー映画

オレンチ

はじめまして!オレンチと申します!

今回は日本が世界に誇る巨匠、黒澤明監督作品から『どですかでん』について書いていこうと思います。

早速ですが、以下目次からどうぞ!

『どですかでん』の基本情報

  • 1970年/日本
  • 黒澤明監督
  • 頭師佳孝

あらすじ

ある郊外の貧しい地域に住む人々。浮気性な妻のせいで沢山の子供を抱える夫や、妻を悪く言われると激怒する夫、子供に夢ばかり語る乞食の父親など、変わった人ばかりが住む中を、六ちゃんと呼ばれる少年は「どですかでん」と音を立てて電車を走らせていく。

(U-NEXTより)

ネタバレ感想・解説・考察

“色”を撮った映画

『どですかでん』(70)は黒澤明監督初のカラー映画として有名な作品であり、『どん底』(57)、『赤ひげ』(65)に続く群像劇である。

群像劇とは?

群像劇とは、複数の登場人物がもつ短編的なエピソードが織りなすストーリー手法で、『グランド・ホテル』(33)が初めて試みたことから「グランドホテル形式」とも呼ばれる。

貧しい地域に住む人々の暮らしを描いたという点で、『どん底』イズムがかなり強い。

黒澤作品のなかでもトップクラスに登場人物が多く、群像劇のセオリーとして冒頭で登場人物を紹介していくのだが、30〜40分くらい使っている。長い・・。

 

群像劇は個々の短編エピソードからなるものの、1本のメインエピソードが走っており、最終的にはそのメインエピソードに集結することがほとんどだ。

しかし本作は完全に短編エピソードの集合体として作られていて、これといったメインエピソードは存在しない。群像劇というよりも短編オムニバス映画といった方がしっくりくるかもしれない。

いわば貧しい街に住む人々のユニバース映画なのだ。

 

それぞれのエピソードは平凡なもので貧しい地域らしさのため、明るいものではない。というよりも気が滅入るエピソードが多いといった方が正解かもしれない。それでもここに住む人々は、態度や言葉に表すことなく精一杯生きている。

黒澤明が初めてのカラー映画にこの題材を選んだ理由は、この気が滅入るエピソード群だったからこそなのではないかと思う。

もし本作がモノクロ作品だったのなら、正直目も当てられないほど暗い映画になっていただろう。

とりわけ登場人物たちに大きな変化がうまれるわけでもないので、本当に救いようのない話になってしまうのだ。

 

しかし本作は極彩色とも言えるカラフルな背景で、気が滅入るエピソードたちを中和しているのだ。

誰が見てもハッキリとわかるくらい本作は”色”を意識してセットや構図が組まれている。

彼らが住む家はいずれも奇抜な色を塗られていたり、六ちゃんの家の窓はまるでステンドグラスかのように電車の絵が描かれていて、朝日がそれを照らす。

街に出れば車や地面に煌びやかなネオンが反射する。

 

本作で黒澤明は人間を媒介にして、”色”を撮っているのだ。

本作において重要なのは色で、登場人物や彼らのエピソードはスクリーンの色を際立たせる脇役に過ぎない。

十人十色とはよくいったもので、カラフルな背景が本作そのもののメタファーとなっているのだと思う。

 

どですかでんってそういうことか!

本編を見るまで”どですかでん”の意味が全くわからなかったが、その疑問は一瞬で解決する。

ただの電車ゴッコの時に用いる文句だったのね!

 

自分が市電の運転手だと思っている六ちゃん少年が、電車ゴッコで電車が線路の上を走っている音に見立てて「どっですっかでーん!」と喋っているだけだった。

要するに「ガタンゴトン」と同じやつ。

 

まるで主人公のように各メディアのポスターとして登場する六ちゃんのエピソードはほぼこれで終了。

朝から晩まで「どっですっかでーん!」と言って走り回っているだけだった。

 

ただ六ちゃんを演じる頭師佳孝は、妄想の電車を操縦するために何日もリハーサルを重ねたらしい。そんな最中黒澤監督はカメラマンに「どう?電車が見える?」と何度も聞いたらしい。

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