チェ。オレンチです。
「チェ」とはスペイン語で「やぁ」などを表す砕けた呼びかけ言葉で、革命家エルネスト・ゲバラの愛称で有名ですね。
エルネスト・ゲバラの愛称がチェ・ゲバラになった経緯はこうである。
アルゼンチン人だったゲバラがキューバ人に話しかける際、「チェ。エルネスト・ゲバラだ。よろしくね!」と挨拶をしていたのがきっかけで、キューバ人が面白がってつけたあだ名が始まりだそうな。
挨拶だったんですね。
たいへん気に入りましたので、当ブログでも飽きるまで使っていこうと思います。
と言うわけで今回は『チェ 28歳の革命』(08)の感想に行ってみます。
感想・解説・考察
●ステーブンをバーグで締めると早撮り監督の出来上がり
チェ・ゲバラもとい、エルネスト・ゲバラをテーマに扱った『チェ』(08)は、上映時間が4時間30分にも及んでしまったため、『チェ 28歳の革命』(08)を前編、『チェ 39歳別れの手紙』(08)を後篇とした二部構成に分けられた作品であります。
クエンティン・タランティーノの『キルビル』(03)がVol.1とVol.2が2つで1つの映画であるように、『チェ』(08)も2つで1つの映画だと言うことを頭の片隅にいれておいて頂きたい。
てなこって本来なら2本合わせて感想なり解説なりを書いていくべきなんでしょうが、一応スタッフロールで区切られるし、そもそも諸事情(ゲームオブスローンズ再鑑賞)あってなかなか後編に手がつけれてねぇもんで、今回は前半のみに焦点を当てていきます。
察しの良い人も悪い人もすでにお気づきかと思うが、後半未見の宙ぶらりんレビューですので悪しからず!
監督は早撮りが特徴的なスティーブン・ソダーバーグ。
ほぼ毎年作品を発表しており、多い年は年間2本を制作。
2000年には『エリン・ブロコビッチ』(00)と『トラフィック』(00)でアカデミー監督賞にダブルノミネートされるなどの実力の持ち主。
彼の手にかかれば4時間30分の映画など普段の仕事となんら変わらないのである。
「スティーブン」を「バーグ」で締めると早撮り監督が出来上がるんかな。
スピルの方のバーグも早撮りです。
ゲバラを演じるのは同監督の『トラフィック』(00)でアカデミー助演男優賞を受賞した巨漢じゃない方のデル・トロ。ギレルモじゃなくてベニチオです。
『スナッチ』(00)を見てからというもの無類のデルトロファンである僕のオススメは『21グラム』(03)と『ハンテッド』(03)なので是非見てね!
ただし観たかったデルトロが見れると話題の『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』(18)はまだ未見の不孝者です。
ちなみにデルトロは生まれ育った土地がら『007/消されたライセンス』(89)の撮影でメキシコを訪れるまでチェ・ゲバラのことを「悪者」だと認識いたそうだけど、実際チェ・ゲバラのことを理解してTシャツ来てる人民は日本にどのくらいいるんでしょうね。
思想だけとってみればマルクス主義なもんで、今の日本(資本主義)をみたら革命の対象でしかないんすよ。
個人的にはマルクス主義=社会主義=共産主義が掲げる理想は、実現不可能な理想論でしかないと思っているので、思想だけみたらゲバラはノーセンキューな人物なんですわ。
だって、自分が汗水たらして頑張った労働によって生まれた成果物が、みんなのもの─、ひいては国家のものにされるのはなんか癪やん。
資本主義と社会主義という共存できない壁をも超えてチェ・ゲバラが支持される理由は、彼の持つ道徳的な側面や信念を曲げない姿勢にあるのでしょう。
●ヌーヴェルバーグの風
本作『チェ 28歳の革命』(08)はフィデル・カストロからキューバ革命に誘われ、同革命を成就させることで真の革命家になるまでの物語であり、一方で世界的に知名度を上げた後の回想的な物語でもあります。
ちなみに本作よりも以前のチェ・ゲバラは、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』の主人公が乗る馬の名前にちなんで、ロシナンテと名付けたオートバイで南米旅行をしており、『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04)として映画化もされとります。
ストーリーの構成は、
- 革命中
- 革命後の国連総会
- 記者によるインタビュー
の3層構造になっており、これらがバラバラに挿入されていくもんで、物語はバチクソ追いかけにくい作りになっとります。
「革命後の国連総会」つまり未来、もしくは現在がモノクロというセオリーとは逆構造になっているのでいくらか状況を理解しやすいが、それでも追いかけづらいものは追いかけづらい。
それにしてもゲバラが喘息もちだったことは知らなかった・・。
山岳地帯に潜伏中はゴホゴホと咳こむシーンが多く、それが致命的となって政府軍にあわや見つかってしまいそうになる局面も。よう葉巻をすっとったな。
劇中には随所にゲバラが残した名言が挿入されておりまして、中でも僕のお気に入りは「真の革命ならば、決して隠れて行ってはならない」とのお言葉でした。
全体的に客観的で淡々とその場を撮影するような作風なので、記録映画のような雰囲気があり、どことなくヌーヴェル・バーグが持つ偶然的産物がフィルムに宿っている気がしました。
思えば『勝手にしやがれ』(59)でジャンプカットを偶然生み出したジャン・リュック=ゴダールも、脚本などほとんどなく、俳優たちの即興に任せ行き当たりばったりの作風で多くの作品を生みだしております。
おそらくこれが早撮りソダーバーグのカラクリ。
ただスピルのほうのバーグはもっとしっかり万人向けに作品を仕上げてきやがるんですわ。
「ブ」と「ヴ」の間に越えられない壁でもあるのかな。
『ペンタゴン・ペーパーズ』(18)と同時期にを仕上げているのが『レディ・プレイヤー・ワン』(18)で、どちらも大傑作なんですけど、『ペンタゴン・ペーパーズ』(18)の音楽を依頼していた盟友ジョン・ウィリアムズに、『レディ・プレイヤー・ワン』(18)の分も依頼したら「ついてけんわ」とさじを投げられたのは知る人ぞ知る有名な話です。
名作曲家でもさじを投げる仕事の速さ!あっぱれです。
話はそれたけど『チェ 28歳の革命』(08)ですね。
革命が成就し首都ハバナへと向かう道中、敵兵のスポーツカーを盗んで盛り上がっている兵士たちを制止させ、「いかなる相手からも盗みは許さない」と一喝。
元の場所に反して、歩いて首都まで来いとな。
そういう信念が通ったところだよな~ゲバラの魅力。
「信じられん奴らだ」とぼやきながら本作は幕を下ろします。
そんなこんなで後半へ続く!
スタッフ
- 監督:スティーヴン・ソダーバーグ
- 制作:ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ
- 脚本:ピーター・バックマン
- 撮影:ピーター・アンドリュース
- 編集:パブロ・スマラガ
- 音楽:アルベルト・イグレシアス
キャスト
- チェ・ゲバラ:ベニチオ・デル・トロ
- アレイダ・マルチ:カタリーナ・サンディノ・モレノ
- フィデル・カストロ:デミアン・ビチル
- ラウル・カストロ:ロドリゴ・サントロ
- カミロ・シエンフェゴス:サンティアゴ・カブレラ
- シロ・レドンド:エドガー・ラミレス