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『ビザンチウム』解説ネタバレ感想・伏線・考察|【評価】

オレンチ
オレンチ

はじめまして!オレンチと申します。

今回は2012年に公開されたニール・ジョーダン監督の『ビザンチウム』について僕なりに考察し、解説していければと思います。

『ビザンチウム』はシアーシャ・ローナン、ジェマ・アータートンで贈るヴァンパイア映画でニール・ジョーダンとしては『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』以来、2度目のヴァンパイア映画となります。

というわけで早速ですが本題へと進んでいきましょう!

注意

この記事はネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

『ビザンチウム』のネタバレ感想・解説・考察

フェミニズム映画の重要性

ニール・ジョーダン監督は『狼の血族』では『赤ずきん』をモチーフにした作品を、前述した『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では文字通り吸血鬼伝説をモチーフにした作品など、説話をモチーフにした作品を好む傾向があるみたいですね。

そんな思惑があるのかないのか制作された2度目のヴァンパイア映画『ビザンチウム』では、ヴァンパイアというモチーフの中で”フェミニズム”を語った物語だと言うふうに感じました。

今となってはフェミニズム映画をテーマにした作品が多く作られるようになったハリウッドですが、そのような潮流になったきっかけは2017年に発覚したハリウッドの”超”がつくほどの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワイスタインの性暴力事件がキッカケなので2012年の時点でこのテーマを描いたニール・ジョーダンとしては先見の明があったと言えるかもしれません。

ちなみに「”また”フェミニズム映画か」という意見をよく耳にしますが、そう言った意見を発信できる人はミソジニー(女性軽視)などといった問題に晒されることなく生活できている”特権”を持っている人がほとんどで、知らず知らずのうちに自分の”特権”を振りかざしてしまっている危険性が潜んでいます。

つまりフェミニズム映画は「また」と思う人ほど耳を傾けなくてはならない映画なんですね。

ハーヴェイ・ワインスタイン問題をキッカケにようやく世間が女性軽視の問題に耳を傾けるようになり、これまで我慢することしかできなかった人々の声が具現化されてきていると言うことだと思います。

そもそも映画史を見返せば戦時中のプロパガンダ映画や、アメリカの反抗期と呼ばれるアメリカン・ニュー・シネマなど常に映画は時世の鏡として機能してきたので、フェミニズム映画が多いということは、それだけ世界が注目しているということですね。

またハーヴェイ・ワインスタイン問題は『その名を暴け』というワインスタインの性暴力を暴いた二人の記者のドキュメンタリー本で詳しく読むことができるので是非こちらも読んでみてください。

『その名を暴け』は『SHE SAID』というタイトルで2023年に公開予定ですのでこちらも要チェックですね!主演の一人はキャリー・マリガンなので完全に『プロミシング・ヤング・ウーマン』からのナイスなキャスティングですね。マリガンはきっと、フェミニズムを鼓舞するヒーローのような存在になるような気がします。

『ビザンチウム』に見るフェミニズム

長々と前置きを語ってしまい、まだ一度も『ビザンチウム』のことを話してません。ごめん。

というわけでようやく本題に入っていきたいのですが、『ビザンチウム』は非常にフェミニズム的だと前述しました。

とりわけ顕著なのは本作におけるヴァンパイア界のルールですね。本作のヴァンパイア界は女性禁制で女性がヴァンパイアとなることは許されません。さらに女性がヴァンパイアを生み出すことはタブーとされており、タブーを破ってしまい生み出されたエレノアへの粛清が物語の推進力となっています。

ではなぜ女性禁制なのか。これには明確な理由がないんですよね。まさに現実世界に蔓延る家父長制の縮図のようになっており、あろうことかクララの手よってヴァンパイアへと生まれ変わったエレノアは迫害されようとしています。

そんな理不尽な話ってないじゃないですか。

この理不尽さをエレノアやクララ側の視点から追体験するわけで、本作で感じた理不尽さはともすると家父長制の社会の中で理不尽さを感じていた人々の追体験ということが言えるかもしれません。

そんな理不尽な世界の中で生きていくにはどうしたら良いかと言えば、女性同士で手を取り合って生きていくことになり、そんな中から生まれた言葉がシスターフッドという言葉です。

シスターフッドとは男性優位の社会を変えるために女性同士が連携することを表した言葉で、シスターフッド的と言える映画も数多に存在します。

そんな中で注目したいのがHuluオリジナルで制作されている『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』です。『ハンドメイズ・テイル』にはミソジニーやシスターフッド、ホワイトフェミニズムなど様々な問題をディストピアSFの中で語った傑作ですのでこちらもぜひご覧いただけたらと思います。

『ビザンチウム』ではクララとエレノアが姉妹として男性優位のヴァンパイア界に争う物語となっており、とてもシスターフッド的と言えますよね。

さらに『ビザンチウム』はヴァンパイアの不老不死という特性を生かし、クララとエレノアが姉妹であり親子であるという面白い関係性を築いています。無理なく巧みに親子のテーマも埋め込んだと言った感じでしょうか。

このようにフェミニズム的なテーマに重きを置いているからこそ、これまでのヴァンパイア映画とは違い、昼間でも活動できるし、牙も存在しておらず、驚異的な身体能力も備わってないんですね。

『ビザンチウム』とビザンツ帝国

さて物語の構造について少し語ると現代と過去を交互に語る作劇がされており、物語の流れの中でクララとエレノアの出生の秘密及び彼女たちが放浪生活を送る理由について点と点がつながっていくような流れが面白いですね。

『ビザンチウム』というタイトルの意味についても少し考察してみようと思います。本作におけるビザンチウムとはクララが経営することになる売春宿の名前ですが、原点を辿るとビザンツ帝国が見えてくるような気がします。

本作のクライマックスで男性のヴァンパイアが、クララを処刑しようとした時に使った剣が「ビザンツ帝国のもの」と語っているシーンもあるのでやはりリンクある気がします。

ビザンツ帝国とは395年にローマ帝国が東西に二分され、コンスタンティノープルを首都とし統治した東方領のことを指し「東ローマ帝国(ビザンツ帝国)」とも呼ばれています。

少し調べてみるとビザンツ帝国は女性の地位が向上したと言われているようで、その理由は皇帝による世襲制だったものの、皇后も同等の権力を持ち、女帝も誕生していたそうです。

面白いことにビザンツ帝国の女帝の一人の名前がエイレーネーで、ローマ帝国史上初の女帝です。

エイレーネーとエレノア。

なんだか名前が似ていると思いませんか?

参考:ビザンツ帝国(東ローマ帝国とは?1000年の繁栄と歩みをわかりやすく徹底解説!

参考:エイレーネー(東ローマ女帝)- Wikipedia

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