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【ネタバレあり】『ワイルドスピード/スーパーコンボ』感想:─ある要素によって表現される表裏一体─

こんにちは!オレンチです!

劇場公開作としては初のスピンオフ作品。

今回は『ワイルドスピード/スーパーコンボ』をお届けします!

それでは感想やら評価やら解説やら、行ってみよう!

結局はファミリー

シルヴェスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガーなど、一時期ハリウッドの前線に立っていた筋肉スターたち。いつしか力で全てを解決するアクションは飽きられ次第に廃れていった。

しかし時代の流れに逆らうように腕っ節だけで全てを解決していく最期の筋肉スターがドウェイン・ジョンソンである。

ハムナプトラ2』からキャリアをスタートし、同シリーズのスピンオフ『スコーピオン・キング』では主演を務め、その後も『ドゥーム』や『ランダウン』など細々と主演をこなしてきた。

そんな中、彼をハリウッドのトップスターへのぼらせたのが『ワイルドスピード』シリーズだろう。

対するはこちらも現代を代表するアクションスター、ジェイソン・ステイサムである。

今となってはジャッキー・チェンジェット・リーを彷彿させるスマートなアクションが売りの彼だが、そのオリジンはガイ・リッチー監督の『ロック・ストック・トゥー・スモーキング・バレルズ』である。

同監督の『スナッチ』では主演を務めた。ジェイソン・ステイサムは『スーパーコンボ』の次回作にガイ・リッチー監督を推しており、これが叶ったらまた面白いことになりそうだ。

そんなジェイソン・ステイサムをアクションスターにたらしめたのは本作と似たDNAを持った『トランスポーター』シリーズだろう。

現代を代表する二大アクションスターをどちらもカーチェイスがテーマのアクションムービーが育てたと思うとなかなか面白い。

僕はこの二人こそ『プレデター』と一騎打ちでもさせれば良い『プレデター』映画が出来上がると思っていたが、今回の敵役も非人間といえば非人間なのでパワーバランスはちょうどいいだろう。

どちらかというとドウェイン・ジョンソン主演で、クライマックスはコイツと一騎打ちが見たい。

さて物語はMI6の奇襲シーンから始まる。

本作でメインとなる新キャラクター、ヴァネッサ・カービーイドリス・エルバが対峙し、物語のキーとなるウイルスがヴァネッサへ注射される。これはインサイト・インシデントと呼ばれるシーンで、いわゆる《ツカミ》のシーンだ。

この《ツカミ》が意図するところはというと、シリーズファンには真新しさを─。初見の人であれば親しみさすさを提供しているように思える。

ファンと初見。どちらの層に対しても《新キャラのみのツカミ》というアプローチによって、ファンは新たなキャラの参戦に胸を躍らせるし、初見にとっては背後にシリーズを感じさせないため物語に入り込みやすいのだ。

さて《ツカミ》のテンションから一変し、コマ割りによってホブス&ショウの私生活から本格的に第一幕が幕を開ける。

物語の推進力は当然「ヴァネッサに注射されたウイルスを取り除く」という目的であり、72時間という制限時間も設定され物語に《焦り》が生まれ、推進力に燃料を与えている。

さらにこの推進力へまとわりつくように設定される副題が、ホブスとショウ両者の「家族」についてだ。

結局スピンオフにやってきてまで「ファミリー!ファミリー!」と言っているんだな。このシリーズは。

ただし本家では語ることのできない(どちらかと言えば語るの意味のない)ファミリーについてなので、模範的なスピンオフとも言えるなぁ。

《ヴァネッサを救う》という主題と、《両者の家族問題》という副題が上手いこと絡み合い、第二幕では外的葛藤と内的葛藤が容赦なくホブス&ショウの前に立ちはだかるのだ。

例えば、

  • 的のアジトに侵入しなければならないが、セキュリティ的には難しすぎる。
  • ターミネーターとかしたイドリスがウイルス欲しさに行く手にはばかる。

というのが外的葛藤

  • 自ら行動しなければ妹が死んでしまう。
  • 25年ぶりに兄に会いに行かなければならない。

というのが内的葛藤だ。

そんなわけで観客に物語を見せると言った意味ではとてもよくできた脚本だと思いますよ。なぜなら葛藤こそ物語を動かすのであり、見る人に興味を与えるのだから。

シリーズ屈しのバカバカしさ

ワイルド・スピード MAX』あたりからこのシリーズに対してバカバカしさを指摘するほうがバカだと言えるように、ある意味バカバカしさを楽しむシリーズではあるのだけれど、それにしても今回は度が過ぎているとも思うんです。

特にドウェイン・”ザ・ロック”・ジョンソン!

第一幕のターニングポイント─ヴァネッサ、ドウェイン、ジェイソンが3人同時に揃うCIA取調室のシーン─に改造イドリス・エルバが現れ、気絶したヴァネッサをかっさらっていくのだが、ドウェインがヴァネッサを救うために素手でワイヤーのロープを掴み滑り下りるのだ。

もうこの時点で、

「手のひらの皮どないなっとるんだろう。」

と心配でたまらなかったのだが、あろうことか次の瞬間に彼はその手を離す。自由落下するドウェインの目的は目下の敵にしがみつくことで生まれるショートカットだ。

そのショットはさながらアメコミ映画そのもの。結局ショートカット大作戦は大成功とはいえず、敵もろともコンクリにたたきつけられる。

つまりドウェイン・ジョンソンはほぼビルから落ちたのだ!

「ビルから落ちる」という力の誇示は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』でキャプテンアメリカがやっていたじゃないか!

ヴィヴラニウムの盾が人肉の盾に変わっただけでほぼキャプテンアメリカ!

カーアクションがいずれも普通のカーアクション─車がただの乗り物としてしか扱われてなく、主役として扱われていない─に留まってしまい、少しさみしく思っていたのだが、クライマックスでのカーアクションは非常に興奮した。

兄弟たちが力を合わせ、ウィンチとニトロを駆使して繰り広げられる「車VSヘリ」の見せ場は至極「ワイルドスピード」的でバカバカしさが非常に心地よい。

がしかし、ここでもドウェイン・ジョンソンがやりすぎた。

腕っ節だけで飛び去ろうとするヘリコプターを押さえつけるのだ。

ドウェイン・ジョンソンが頑張ったのは一瞬だけだったので役に立っているのかどうかは定かじゃないが、飛び去るヘリを押さえつけるという力の誇示もキャプテンアメリカがやっていたじゃないか。

もはやスーパーヒーロー映画である。

さらに「車VSヘリ」のシークエンスに少々突っ込ませていただくと、ドラム缶を使用した打ち上げタル爆弾のトラップがありましたが・・・

直撃したら妹もろとも木端微塵だと思うんですよ。

興奮したと言えば、サモアに伝わる戦いの儀式、《シバタウ》である。

現代を舞台にした映画なのにまさかの合戦でバカバカしさこの上ないのだが、ギリで状況に納得できる設定だったし、何より本作に求めたバカバカしさを具現化したのがこの合戦なのだ。

その合戦を鼓舞するために見せつけるのが《シバタウ》である。こんなもん興奮必須だ。

現代なのに合戦というクライマックスは最近どこかのヒーロー映画で見たばかりだし、本作のヴィランはどこかのサノスと同じソシオパスだったし、いよいよ本当にスーパーヒーロー映画だな。

がしかし、この興奮は一瞬で冷めることになる。

なぜかって肝心の合戦シーンがえぐいほど下手だったから。

デヴィット・リーチ監督なので戦闘シーンは間違いないはずと思っていたんだが、臨場感と重量感を出すため、ハンディカメラによってわざと手ぶれさせながら雑に倒される敵をカメラがフォローする。さらにスピード感を演出するため、カット割りが多様される。

結果、誰が何をしているのかほぼわからない戦闘シーンとなってしまっているのだ。これはいただけない。

以上から類推するに、デヴィット・リーチ監督は筋肉スターの扱いに慣れていない。

思えば定評のあるリーチ監督作品は『ジョン・ウィック』、『アトミック・ブロンド』、『デットプール2』などで、腕っ節よりも頭脳と技能で戦う。

なので本作でもジェイソン・ステイサムやヴァネッサ・カービーの見せ場は軒並み良い。

ラストの「2vs1」のタンデムアクションはどちらかと言えば腕っ節より頭脳なのでやはり良かった。

クライマックスのタンデムファイト!

表裏一体の演出

さて本作ではホブスとショウの関係を視覚的に表すため色の対比が使われている。

このことは冒頭のコマ割りで非常にわかりやすく伝わるようにできている。

ホブスは暖色。ショウは寒色。といった形でお互いのコマがお互いのカラーで染まっているのだ。

さらに面白いのは、お互いのコマが夜になるとホブスは寒色。ショウは暖色といったようにお互いのカラーが逆転するのだ。

昼と夜。陰と陽。

この切り替わりで色が逆転させることによって両者が表裏一体だということを表しているのだと思う。

さらに舞台がショウのホームであるロンドンに移ると、しばらく画面全体のカラーは寒色に染まる。

物語は進み、ミッドポイント─盗んだウイルスを取り除く装置が壊れたシーン─を迎えると舞台はサモアに移る。

サモアに移ると当然画面全体のカラーは暖色に染まるのである。

つまり映画全体でみたとしてもおよそ半分ずつお互いのカラーが使われているのだ。

この演出はなかなか粋である。そして丁寧だ。

この丁寧さがジェイソン・ステイサムがガイ・リッチーを推薦する理由だろうな。

ミッドポイントの手前。寒色のホブス&ショウ。

ミッドポイントの先。暖色のホブス&ショウ。

粋と言えば唐突に現れたライアン・レイノルズも粋だったし、もっと唐突に現れては消えたケヴィン・ハートも粋だった。

ライアン・レイノルズは同監督の『デッド・プール2』の繋がりからだろうし、

ホブスとは親友らしい。ロックことライアン・レイノルズ。

ケヴィン・ハートは過去ドウェイン・ジョンソンと『セントラル・インテリジェンス』や『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』で共演している。

まあまあ扱いが酷かったケヴィン・ハート。

つまるところ、『ワイスピ』シリーズの永遠のテーマは《ファミリー》だということでしょうな。

ここまでほぼハゲかクリーチャーの画像ばかりだったので最後に美しすぎるヴァネッサ・カービーちゃんでお別れします。

『ミッションインポッシブル/フォールアウト』ではあまり出番がなかったが、今回で美人度を再認識いたしました。

兄貴のキスに驚く顔が可愛すぎて!!!

最後くらい綺麗なものを見て帰りましょう。最後までありがとうございました。

どでかく。今回あまり触れなかったけど、ドチャクソ可愛くて一撃でファンになりました。

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