チェ。オレンチです。
駅には矢印が読めない輩が多いですよね。
上りの階段だっつってんのに、我先にと逆走してくる人間が後を絶ちません。
さらにはそこで電車を待つのが禁止だと、ゼブラゾーンで親切に示してくれるのに、いち早く電車に乗りたいがためにそこに突っ立ってる奴もいますよね。
なんでゼブラゾーンかといえば、そこは人が通る通路だから。
邪魔でしょうがないです。本当に腹正しい。
脳味噌がゾンビ以下の人間で都内は溢れています。
というわけで今回は『ゾンビランド:ダブルタップ』(19)の感想行ってみようと思います。
目次
感想・解説・考察
●歓喜の全員続投!
2009年ゾンビ映画界にとってエポックメイキングな作品となった『ゾンビランド』(09)から早10年、やっとの思いで続編『ゾンビランド:ダブルタップ』(19)の登場です。
もう10年か!ずいぶん待ったな〜。
前作同様ルーベン・フライジャーがメガホンをとり、キャストも全員続投。とりわけキャストが全員続投した件は前作ファンの僕にとって大歓喜な案件でした。
なぜ大歓喜なのかと言うと、ただでさえ10年越しの続編となると、何食わぬ顔で別人が同一人物を演じていることが多い映画界で、前作『ゾンビランド』(09)公開後にジェシー・アイゼンバーグは『ソーシャルネットワーク』(10)で数々の映画賞に輝き、エマ・ストーンもまた『ラ・ラ・ランド』(16)でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、大きく羽ばたいてしまったが故、本作の再出演に興味を持ってくれるのか非常に不安があったため。
そんな不安はまるで不要だったようで、エマ・ストーン曰く、前作出演後は定期的にキャスト勢と連絡を取り合っていたんだとか。
何はともあれ、オールキャストで戻ってきた『ゾンビランド:ダブルタップ』の開幕です。
●ゾンビにも名前がついたぞ
『くもりときどきミートボール』(09)や『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(19)など、コロンビア映画のシンボル“コロンビア・レディ”がしばしば弄られてきましたが、本作に至っては手に持つトーチでゾンビをしばき倒す最高の幕開けを果たした『ゾンビランド:ダブルタップ』(19)。
物語上もちゃっかり10年の時が過ぎており、エスキモーが雪に名前をつけていたように、ゾンビに名前をつけ分類分けすることで敵を知り、わずかな人間どもは生き延びておりました。(ゾンビFPSの傑作『Left 4 Dead』を想像したゾンビ愛好家は僕だけじゃないはず。)
そんなカテゴライズされたゾンビたちを紹介すると、
- ホーマー
- ホーキング
- ニンジャ
- T-800
と4種類に分類されます。
■ホーマー
この世界ではYOUTUBEを見るのと同等レベルで暇つぶしの笑いを提供してくれる、最もバカなゾンビ。
名前は『シンプソンズ』の大黒柱ホーマー・シンプソンから。
原発の制御室で働くホーマー・シンプソンは、水飲み鳥に制御スイッチを押させて自分の替え玉を図った筋金入りのバカですが、妻マージとの夜の営みを「仲良し」と呼ぶ可愛い一面もあります。
■ホーキング
ホーマーよりも考える能力のあるゾンビ。名前はホーキング博士から取ったらしいが、ホーキング博士って誰?と言う人は『博士と彼女のセオリー』(14)を鑑賞されたし。エディ・レッドメインが体を張って教えてくれます。
ちなみに劇中ホーキングを解説するシーンで、網膜センサーを解除するため死体の目玉をかじりとるシーンがあるが、死体の方はルーベン・フライジャー監督の実の父親でございます。
ルーベン・フライジャー作品への出演を熱望した父に困り果てたルーベンは演技のいらない死体で無事父との約束を果たしました。
■ニンジャ
T-800の出現以前、最も恐れられるゾンビで、足音なく人間に忍び寄ります。
が、ニンジャがすぎて劇中活躍することはほぼ0でした。
■T-800
説明不要だが『ターミネーター』(84)でサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を執拗に追い回した殺人マシーンから命名。
名前の如くどんなに撃たれても立ち上がり、人間を襲うタフで早くて嫌な奴です。
ただどのゾンビもパッと見で判断することは難しく、後半のゾンビはほとんどT-800みたいです。
●目配せと伏線
そんなゾンビたちの紹介が終わると、前作を踏襲したメタリカとスローモーションのオープニングが最高です。
続編における踏襲とかファンの目配せとか反復とか最高ですよね。
そもそも“ダブルタップ”と言うサブタイトルが最高の踏襲で、”ダブルタップ”とは2度撃ちの意。
本シリーズの魅力であるゾンビの世界を生き抜くための72のルールから持ってきております。つまりは「わかってる!」と言わざるを得ない秀逸なタイトルなのです。
他にも前作を彷彿させる目配せは随所に散りばめられており、406号室(アンバー・ハード)について言及されていたり、大統領専用車もといビーストのツノには前作でタラハシー(ウディ・ハレルソン)が執着しまくったトウィンキーのマスコットが括り付けられていたりします。
ちなみにこの大統領専用車は『ホワイトハウスダウン』(13)の撮影で使わなかった車両だそうな。
さらに本作上で張り巡らされた伏線がこれまた秀逸!
パッと思いつくだけでも、
- バッファロージャンプ
- 大統領の包み紙
- 催涙スプレー
- ミニバンのサイドミラー
- トラックの横転
- ピンクのキャデラック
があります。大小あるけどそれぞれ説明していくと、
■バッファロージャンプ
冒頭付近のショッピングモールで、タラハシーが自分にはネイティブアメリカンの血が流れており、先祖はガントレット戦法を用いてバッファローを崖から落とす狩り、バッファロー・ジャンプを行っていたとコロンバスに説明していますが、本作のクライマックスで用意されている今世紀最大のゾンビキル、バビロンでのゾンビジャンプに繋がっております。
そもそも本作でタラハシーは、やたらとネイティブアメリカン感を彷彿させておりました。(前作ではネイティブアメリカンのショップぼ破壊してたのにね!)
■大統領の包み紙
タラハシーがリトルロックへ贈ったクリスマスプレゼントの包みは、とある大統領(名前忘れた)の肖像画を切り取ったもので、ウィチタが銃を取りに戻った後の長回しショットで切り取られた肖像画が写ってます。
■催涙スプレー
新キャラ、マディソン(ゾーイ・ドゥイッチ)がボソッと言ったセリフも見事に回収。
いつも持っているらしい催涙スプレーで見事ウィチタの命を救いました。
■ミニバンのサイドミラー
なんともミニバンが気に食わないタラハシー。乗り込むたびにサイドミラーを蹴って気晴らししていましたが、最後の最後に手榴弾でミニバンを吹っ飛ばした際、サイドミラーが画面に向かって飛んできています。
■トラックの横転
モンスタートラックで移動することに対して「横転する危険がある」と否定的だったコロンバス。その予想は的中し、クライマックス付近でモンスタートラックは横転してしまい、再び一行はピンチに。
■ピンクのキャデラック
ホワイトハウスからリトルロックを助けるために出発する時、男の中の男はピンクのキャデラックに乗ると豪語していたタラハシーですが、男の中の男になれたのかラストはピンクのキャデラックに乗り家族であり我が家となった仲間たちと去っていきます。
ちなみにピンクのキャデラックはバビロン到着時にちょこっとだけフレームインしてました。
●続編作る気満々です
ボブ・ディランの曲を自分が作曲したと豪語する役立たずバークレー(アヴァン・ジョーギア)と駆け落ちしてしまったリトルロックを探すため、再び旅に出る。と言うのが本作の大きな道筋な分けですが、そんな道中で増える新キャラも最高でした。
とりわけ、ゾーイ・ドゥイッチと言う才能の発掘は本作の功績の一つに数えられるでしょう。
ゾーイ・ドゥイッチが演じたマディソンは、フェミニズムや昨今流行りのヴィーガンをコケにしたようなキャラクターで、バカギャル感がクセになります。
そもそもゾンビ映画の大元を辿ればジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(78)で考えもなしにショッピングモールに集まる人々を風刺したように、ゾンビを用いて社会問題を風刺する作風でしたが、ここでそのスタイルを踏襲しているようにも思えるんだな。
ただ社会問題を体現するのはゾンビではなく、人間。ついに人間はゾンビ以下となりました。
『ミラーズクロッシング』(90)のワンシーンのように退場してしまった時にはさぞかし悲しく思ったものですが、同作のジョン・タトゥーロの如く見事に生還を果たしてくれて僕は嬉しかった!
そうそう本作はエマ・ストーンの顔芸劇場でもあることをお忘れなく!顔芸って笑わせるだけが顔芸じゃないからね!微妙な表情の使い分けが凄いんだ。
そんなエマ・ストーンの《ベスト・ショット・オブ・ザ・イヤー》はマディソン生還の後、「あっちも噛んだしね」とコロンバスとのSEXの詳細を伝えられたときの表情です。
思い出せない人はぜひもう一度ご鑑賞ください。ちなみにルーベン・フライジャーが本作で一番お気に入りのショットでもあります。
さらに新登場したネバタ(ロザリオ・ドーソン)は、
マーレる。(ゾンビと間違えて人間を殺してしまうの意)
と言う名言を産みました。最高です。
『博士の異常な愛情』(64)をパロった爆弾が失敗を遂げた後、モンスタートラックで救世主となって現れたその様には誰しもがしびれたことでしょう。
ちなみにマーレされた張本人ビル・マーレイに着いてはエピソードゼロが用意されているので、最後までしっかり見てから席を経とうね!
最後に全ゾンビランドファンに朗報です。
本作の音声解説でルーベン・フライジャーが次はどうやってビル・マーレイを出演させるか頭を悩ませておりました。
ルーベン・フライジャーはさらなる続編をやる気満々だぞ!
ほんじゃみなさんアスタ・ラ・ビスタ・ベイベー!!
スタッフ
- 監督:ルーベン・フライシャー
- 制作:ギャビン・ポローン
- 脚本:レット・リース、ポール・ワーニック、デイブ・キャラハム
- 撮影:チョン・ジョンフン
- 編集:ダーク・ウェスターベルト
- 音楽:デヴィッド:サーディ
キャスト
- タラハシー:ウディ・ハレルソン
- コロンバス:ジェシー・アイゼンバーグ
- ウィチタ:エマ・ストーン
- リトルロック:アビゲイル・ブレスリン
- マディソン:ゾーイ・ドゥイッチ
- バークレー:アバン・ジョーギア
- ネバダ:ロザリオ・ドーソン
- アルバカーキ:ルーク・ウィルソン
- フラッグスタック:トーマス・ミドルディッチ