オレンチ
はじめまして!オレンチと申します。
映画の感想などで「シーン」と聞いたことがありませんか?自分の感想でも使ったこともあるんじゃないでしょうか。
今回は映画における「シーン」について解説していきます。
シーンとは
シーンとはカットをつなぎ合わせた小さな展開です。物語の1場面を語るのがシーンであり、シーンの集合がストーリーを語ります。
カットとは、カメラを回し続けている連続した映像です。
つまりカットの集合で構成されているのがシーンということであり、「カット」と「シーン」は映像における単位のことなんです。
同じ時間の1シーンでもカット数の違いによって、場面の感じ方が大きく変わります。
カット数を多くする(1カットの時間を短く)と展開は目まぐるしいものになり、スピード感を感じます。
カット数を少なくする(1カットの時間を長く)と場面に緊張感と集中力が生まれます。
例えばホラーはショックが起こる直前のカットが長い場合が多いです。(ショック直前を長回しにすることによって観客の集中力を引き出し、ショックの威力を大きくしている。)
カットとショットは違う
ちなみにカットとショットを混在してしまう人がいますが、この二つには明確な違いがあります。
- カット :被写体を撮影した素材(フィルム)
- ショット:被写体を撮影する方法
例えば映画で最もよく見かけると言っても過言ではない「肩越しショット」を例にしてみましょう。
以下の画像は、
「レッド(モーガン・フリーマン)とアンディ(ティム・ロビンス)の会話を”肩越しショット”で撮影した”カット”」
と表現することができます。
ショットには様々な種類があり、どのショットを選ぶかは監督や撮影監督の腕の見せ所。
ショットについて詳しく知りたい人は、グスタボ・メルカードの『Filmmaker’s Eye』がオススメです。
上記の書籍が気に入ったら、同じ著者の『レンズの言語』もたいへんオススメなのでぜひどうぞ。
ちなみにショットを知ると映画の楽しさが劇的に上がりますよ!
1シーンは何処から何処まで?
カットの集合が1シーンだと言うことは分かりましたが、1シーンとは一体、何処から何処までなのでしょうか?
これには諸説ありますが、以下の2つのように定義することができます。
- 場所が変わった
- 時間が変わった
例えば「場所が変わった場合」の例を挙げてみます。
「ヒーローたちが人質にされた仲間の救出作戦を計画をしていた。とある山奥、人質にされた仲間は自ら脱出する行動に出ていた。」
という物語の流れがあるとします。
この場合「ヒーローたちが脱出を計画しているシーン」と「人質にされた仲間が脱出しようとしているシーン」という2つのシーンがあります。
前者と後者の場所は明らかに違いがありますよね。
ただしこれには例外もあるので注意が必要です。例えばクレショフ効果を狙ったモンタージュのシーンなどが例外にあたります。
「時間が変わった場合」は例えば、
「お酒を飲みすぎていつの間に寝てしまい、深夜に目覚めた。何やら嫌な気配がする。」
この場合は寝てしまうまでが1シーン、深夜に目覚めたカットから新しいシーンが始まります。
1シーン1カット(長回し)
【1シーンはカットの集合体】と解説しましたが、1シーンを1カットで表現する方法もあります。いわゆる長回しというやつです。
長回しは観客の集中力を最大限に引き出し、劇中最も印象の残るシーンの一つになります。
1シーン1カットの好例として、アルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』を挙げることができます。
『トゥモロー・ワールド』は子供が誕生しなくなってしまった近未来を描いたディストピア型のSF映画で、カーチェイスのシーンと戦場のシーンで長回しが利用されています。
また映画を1本まるまる長回し”風”で編集したサム・メンデス監督の『1917 命をかけた伝令』もあります。
この作品はシーンの切り替わりが非常に分かりづらい(というか分かりづらく作ることで長回し”風”になっている)のですが、他の映画と同じようにとシーンは切り替わっています。
この映画はA地点からB地点までの道のりそのものが物語となっていますが、道中に空き家や洞穴など様々な場所を中継しながら進みます。
場所が切り替わるタイミングで、必ず何かが画面を横切るように編集されており、この横切る瞬間がシーンの切り替わりです。
シーンには必ず主導権がある
映画におけるシーンは誰かから誰かに対するアクションで成り立っています。
アクションとは身体的もしくは感情的な全ての動作を示します。
撃ち合いのシーンはもちろんアクションですし、女性に想いを馳せて視線を送るシーンもアクションです。
そして全てのシーンにはそれぞれ主導権を握っている人物がいます。
それは主人公かもしれませんし、脇役かもしれません。悪役の可能性もあるでしょう。
つまり各シーンには各シーンの主役が存在するのです。
この「シーンでは誰が主役なのか?」ということに目を向けると、ストーリーの理解に大きく貢献してくれるでしょう。
この辺りの話はシド・フィールドの『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』や、
三宅隆太氏の『スプリクトドクターの脚本教室 初級編』が参考になりますので、ぜひご覧ください。